2020.12.10

支払手数料とは?勘定科目・内訳について解説、振込手数料や決済手数料の値下げ交渉まで

支払手数料とは?勘定科目・内訳について解説、振込手数料や決済手数料の値下げ交渉まで

支払手数料を安く抑えることは、企業の支出管理においてとても大切です。今回の記事では、支払手数料・振込手数料の勘定科目・内訳、専門家への依頼費用である「支払報酬」の仕訳方法まで紹介します。

そして手数料の値下げ交渉では、アクワイアラや証券代行サービス、金融機関とどのような手順で交渉すれば良いのかも徹底解説します。

TEXT BY Leaner Magazine編集部

   

「支払手数料」とは?

支払手数料とは、金融機関を介した送金や決済にかかる手数料、弁護士・税理士報酬、不動産売買の仲介手数料などを含む勘定科目です。その他、クレジットカード決済の手数料や、証券代行にかかる手数料もふくまれます。

支払手数料の特徴は、会計上一括りにされる支出の中に、ことなる特徴を持った手数料がまとめられている点です。そのため、支払手数料は、以下の2つに分けて考えると便利です。

  • 金融機関等に支払うサービス手数料
  • 専門家への報酬

送金・決済サービスの手数料は、送金・取引件数に比例して増加し、ほぼ毎月支出が発生します。一方で不動産売買や税理士、弁護士など専門家への仕事依頼は毎月発生するわけでなく、まとまって大きな報酬を支払うことが多いです。

支払手数料の経費管理・削減方法を解説

支払手数料のコスト削減に取り組むためには、それぞれの手数料の性質を理解し、費目別に最適なアプローチを取ることが重要です。

まず、 金融機関等に支払うサービス手数料は費目ごとのサプライヤーを理解し、コスト削減策を実行することがおすすめです。

つぎに、 専門家への報酬は「支払報酬」という勘定科目をあらたに設けることで管理がスムーズになります。事業規模が大きくない企業では、「支払報酬」を設けてないところも多いですが、税務手続きを行う上でもメリットがあります。

今回の記事では、以下の順序で解説を行います。

  1. サービス手数料:費目別に適切なコスト削減策を取る
  2. 専門家への報酬:「支払報酬」の勘定科目を設けることで、業務効率を向上する

   

サービス手数料:費目別に適切なコスト削減アプローチを取る

「支払手数料」の大半を占めている支出が金融機関に支払うサービス手数料です。この手数料は費目別に①銀行振込手数料、②海外送金、③クレジットカード手数料、④証券代行手数料に分けられます。これら手数料は個々のコスト構造はことなっており、削減アプローチもことなります。

以下、4つの費目について解説します。

   

銀行振込手数料

銀行振込手数料は「手数料単価」「振込件数」の掛け算によって決まります。振込件数は会社の事業規模が大きくなると、それに比例して増加してしまいます。そのため、より削減難易度が低いのは手数料単価の削減になります。

手数料単価を削減する方法として、以下の3つが挙げられます。

   

①銀行との価格交渉

現在の手数料単価からの値下げを狙って、銀行と交渉を行います。

この際、メインバンクに加え、まだ取引関係がない銀行とも価格交渉を行うことが有効です。これを相見積もりと言います。また事前準備として、Leanerなどのツールを利用して手数料単価の適正価格を把握することで、交渉を有利にすすめることができます。

   

②インターネットバンキングの利用

インターネットバンキングを活用することで、普通の銀行振込と比べて手数料が安くおさえられます。また銀行取引の電子化によって、財務面のデータ連携やリスク管理など、手数料の削減に留まらないメリットを享受できます。

   

③振込代行サービスの利用

振込代行サービスは、企業に代わって各種振込データの作成や銀行への送信手続きを行ってくれるサービスです。振込代行サービスを利用することでどの銀行口座への送金手数料も一律で下げることができます。近年は振込代行サービスの業者が増えており、サービス比較が可能となっています。

銀行との価格交渉の手順やインターネットバンキングの詳細、振込代行業者の主要なサプライヤーのサービス比較については、こちらを参照してください。

銀行振込手数料の経費削減|インターネットバンキングや振込代行サービスを活用した削減アイディアについて解説 | Leaner Magazine|リーナーマガジン

   

海外送金手数料

海外送金手数料の知るうえで理解したいのが、「送金銀行」「受取銀行」です。送金銀行とはお金をおくる側の口座がある銀行であり、受取銀行は海外にある取引先の口座がある銀行になります。送金銀行と受取銀行が直接送金契約(コルレス契約)を結んでいる場合には、直接送金ができます。この場合、手数料は「送金手数料」「為替手数料」「受取手数料」の足し算となります。

一方で、コルレス契約が結ばれていない場合もあります。このときは、送金銀行と受取銀行それぞれ契約を結んでいる中継銀行を経由して送金をします。経由した中継銀行の数だけ、手数料が加算されてしまうため、どの銀行を使うかを慎重に選ぶ必要があります。

海外送金手数料を削減する方法として、以下の2つが挙げられます。

   

①ユーザーマネジメントを通じたコスト削減

日本の場合、銀行ごとに提携関係の強い国や、強みとする業務(貿易や外為取引など)がことなります。そのため海外取引先の地域や取引内容によって、最適な銀行の選択肢は変わります。そのため価格面に加え、銀行ごとの海外送金スピードや業務効率をかんがえ、自社ビジネスの性質・要件にあった銀行サービスを選ぶことがおすすめです。

   

②海外送金代行サービスを利用する

海外送金代行サービスは、銀行が直接提供する海外送金サービスとはコスト構造や送金システムがことなります。くわしくは以下の記事で説明していますが、国内での資金移動として処理できる取引を増やすことで、実際の海外送金コストをおさえています。

送金システムの特異性ゆえに、国ごとの法規制によって利用できるサービスが限定されてしまうデメリットもあります。しかし銀行が直接提供する海外送金に比べると圧倒的に手数料が安くなるため、さらなる普及がみこまれます。

削減アイデアの手順や、主要なサプライヤーについてはこちらを参照してください。

海外送金手数料の削減方法とは?費用の特徴と経費削減アイデアを徹底解説 | Leaner Magazine|リーナーマガジン

   

クレジットカード手数料

クレジットカード手数料は基本的に「加盟店クレジットカード利用率」「加盟店手数料率」の2つを掛け合わせた価格によって算定されます。加盟店クレジットカード利用率とは、加盟店である事業者の当該機関のクレジットカード利用額になります。また加盟店手数料率とは、加盟店である事業者がカード会社に支払う手数料のことを指します。

クレジットカード手数料を削減する方法として、以下の2つが挙げられます。

   

①アクワイアラ(クレジットカード加盟店契約会社)への手数料率交渉

クレジットカード手数料は、携帯電話などの他の費目の場合とはことなり、一度だけ交渉を行うだけではコスト削減に効果的とはいえません。そのため、支払金額が増加するたびに交渉を行い、手数料率を下げてもらうことが重要になります。

   

②決済代行会社への切替・手数料率交渉

2つ目コスト削減方法は、決済代行会社への切替・手数料率交渉を行い、コストを削減する方法です。現行の手数料が決済代行会社の手数料の市場価格よりも高い場合にこの方法は有効です。

削減アイデアのくわしい手順や、主要なサプライヤーについてはこちらを参照してください。

加盟店交渉で安くなる?クレジットカードの支払い手数料を削減する2つのアプローチ | Leaner Magazine|リーナーマガジン

   

証券代行手数料

証券代行手数料とは、四半期ごとの株主名簿作成・管理に際して、信託銀行に支払う手数料です。また株主総会の招集通知の発送、委任状などの集計費用もふくまれます。

証券代行手数料のコストは、「株主数」「業務委託料」によって決まります。たとえば、株主名簿管理料は「株主数」と「株主1名あたりの業務委託単価」の掛け算によって決まります。

2000年代以降の変化としては、2009年の株券の電子化によって保管コストがなくなったことがあります。これによって、業者のコスト負担が少なくなりました。そのため、2009年以前から契約を見直していない会社は、一度見直しをすることがおすすめです。

証券代行手数料を削減する方法として、以下があります。

   

信託銀行との価格交渉

近年、多くの信託銀行が証券代行手数料を見直すようになりました。

取引状況や適正条件を踏まえた価格交渉を信託銀行と行うためには、その信託銀行と融資などの取引実績があるかどうか、もしくはその信託銀行に自社株を保有されているかどうかを把握することが大事になります。取引実績や株保有がない場合、値下げ交渉は難度が高くなります。

また交渉を進める際には、他の信託銀行からも条件を提示してもらうなど、相見積もりを行うことが大切です。そして実際に信託銀行の切り替えも視野に交渉することで、適正最安価格に近い値段を獲得できます。

   

専門家への報酬:「支払報酬」の勘定科目を設けることで、業務効率を向上する

不動産鑑定士や税理士、弁護士など外部の専門家への仕事依頼は不定期で発生することが多いため、可能であれば銀行振込手数料等の他の手数料と分けて把握することがおすすめです。

とくに従業員規模が数千人規模となり、税務・法務や不動産売買の機会が増えた際には「支払報酬」というを費目を設けて、専門家への報酬支払いを管理しましょう。

これは業務効率の改善に繋がります。たとえば、源泉徴収の取り扱いが挙げられます。専門職への報酬の支払ではほとんどの場合、源泉徴収が発生します。源泉徴収については、年始に前年に支払った合計の報酬額を法律で決められた用紙に記載し、管轄の税務署に提出しなければなりません。

一方で振込手数料やクレジットカード売上手数料は、源泉徴収に関する処理は必要ありません。そのため「支払報酬」と「支払手数料」を分けることで金の流れが把握しやすくなり、源泉徴収への対応もスムーズになることで業務効率がアップします。

顧問弁護士など月額制で専門家への支払いが発生する場合でも「支払報酬」で独立して扱う理由も、上にのべたような税務手続きの違いがあるためです。

   

終わりに

企業が成長し、お金のやり取りが増えるほど支払い手数料も嵩んでいきます。とくに海外送金などは、収益の十数パーセントが国際送金のコストとして消えてしまうこともあります。しかし、きびしくサービス選定を行うことによってそのコストを収益の1割未満以内におさえることも可能です。

また専門家に支払う報酬を管理する際に、勘定科目「支払報酬」を設けて他の支出と区別することでキャッシュフローが明確になり、税務手続きもスムーズになります。

これを機会に、読者の皆様が自社における支払手数料の支出管理体制を改善するヒントを見つけて頂けたら幸いです。