海外送金手数料の削減方法とは?費用の特徴と経費削減アイデアを徹底解説

事業の国際化に伴い、急増してくるコストの1つが海外送金手数料です。特に原材料や部品、また自社の製品を輸出入している企業や貿易業務を持つ企業では、海外送金手数料をいかに押さえられるかが収益に直結します。

本記事では海外送金手数料のコスト構造を解説し、効果のあるコスト削減策をお伝えします。また近年、注目され始めている海外送金代行サービスのメリット・デメリットを、日本の法制度も交えて解説します。

TEXT BY Leaner Magazine編集部

海外送金システムと手数料の特徴

海外送金にかかる手数料は、送金・為替・銀行引き出しなど、様々な手数料が足し算されて成り立っています。一般に海外送金というと「送金手数料」を思い浮かべる方が多いと思いますが、それは手数料全体の一部に過ぎません。

この章では、海外送金手数料を考える前提となる海外送金システムを説明した上で、手数料のコスト構造や日本の現状について解説します。

  

海外送金システムとは?

銀行間の海外送金は2つのシステムによって運営され、それぞれ手数料のコスト構造が異なります。

  

①直接送金をするシステム

銀行間での直接送金システムは、送金銀行と受取銀行の2つによって成り立っています。送金銀行とは、海外送金に用いる自社口座がある銀行のことです。受取銀行とは取引先企業の口座がある海外の銀行を指します。

日本の自社口座から海外にある取引先の口座へ直接送金を行うためには、送金銀行と受取銀行が「コルレス契約(Correspondent Agreement)」を結んでいる必要があります。コルレス契約とは、銀行間の送金受取の際の為替取引に関する契約のことです。

すべての海外銀行がこの契約を締結しているわけではなく、国際事業を積極的に展開する銀行間でのみ締結されることが多いです。

この時にかかる手数料は以下のようになっています。

海外送金手数料 =「送金手数料(または受取手数料) + 為替手数料/リフティングチャージ料」

  


・送金手数料: 送金時に支払う手数料
・受取手数料: 受取人が支払う手数料
・為替手数料: 円通貨を海外通貨に変えて送金するための為替手数料
・リフティングチャージ料(為替取扱手数料): 海外に円通貨のまま送金したい、もしくは外貨預金口座から同一通貨をそのまま送金したい場合に加算される料金

 

②中継銀行を介するシステム

日本の送金銀行が、コルレス契約を結んでいない受取銀行に海外送金を行う際には中継銀行が利用されます。中継銀行とは、日本の送金銀行と海外の受取銀行の双方とコルレス契約を結んでいる銀行のことです。送金したい海外の受取銀行に到達するために、中継銀行を2つ、3つ経由することもあります。

この時にかかる手数料は以下のようになっています。

海外送金手数料 = 「送金手数料(または受取手数料)+ 中継銀行手数料  + 為替手数料/リフティングチャージ料」  

中継銀行手数料は、中継銀行を利用する時の取引コストであり、利用する中継銀行の数だけ加算されます。

  

日本における海外送金の現状

日本企業が海外送金する方法は、「銀行による送金」が圧倒的に大きく、そのあとに海外送金代行システムが続きます。

しかし、「銀行による送金」の手数料は海外に比べて割高であり、改善余地が残されています。日銀の決済システムレポートによれば、銀行を利用して200ドル(約2万1500円)の海外送金を行う場合、日本では平均的に送金額の約17%の手数料がかかります。 これはG20平均の約10%に比べるとかなり高いです。

銀行の海外送金手数料が高い背景には、日本の銀行インフラがコスト高である点があります。これは銀行間の国際決済ネットワークであるSWIFTと日本の銀行システムの間をITベンダーが仲介しているためです。

また、部署間での縦割り構造も影響を及ぼしていると指摘されています。これは、多くの邦銀では国内の円資金の決済と外貨決済を担う部署が分かれていることが原因となっています。

  

海外送金手数料を削減するための2つのアプローチ

海外送金の需要増に伴い、銀行側では手数料の値下げやサービスの拡充が始まっています。各銀行では、海外の銀行と提携関係を強め、コルレス契約を締結することで値下げに務めています。

またTransferwiseなどの新しい海外送金代行サービスも登場し始めています、そのため送金代行業者の導入も含め、自社の海外送金のあり方を見直すには良いタイミングです。

本記事では、海外送金手数料を削減するためのアプローチとして、以下の2つを紹介します。

  • 銀行ごとの海外送金サービスを比較する
  • 海外送金代行サービスを適宜利用して手数料を安くする

  

1.  銀行ごとの海外送金サービスを比較する

1つ目のコスト削減策は、海外送金に利用する送金銀行を見直す、もしくは送金銀行の選択肢を増やして使い分ける方法が挙げられます。

海外送金手数料が最も大きくなるのは、中継銀行を複数経由してしまう場合です。逆に最もコストが低くなるのは、取引先企業の口座がある受取銀行とコルレス契約を結んでいる送金銀行を利用することです。

日本の場合、銀行ごとに提携関係の強い地域が異なったり、強みとする業務(貿易や外為取引など)が異なります。そのため海外取引先の地域や取引内容によって、最適な銀行の選択肢は変わります。

そのため価格面に加え、銀行ごとの海外送金スピードや業務効率を考慮して自社ビジネスの性質・要件に見合ったサービスを選ぶ必要があります。

  

銀行別で見た海外送金サービスの特徴

三菱UFJ銀行

三菱UFJ銀行のグローバルCMSサービスは海外送金を行う以外に、海外にある自社口座を国境を跨いで管理することができます。そのため、既に海外拠点を持っている企業にとって使い勝手の良いサービスとなります。

また、もう一つの法人向けサービスBizSTATIONは手数料面での優位性は高くないですが、外為サービスが充実しており、為替予約取引に関するサポートも行っています。そのため、将来的な海外送金に備えて自社の外貨準備高を適宜調整することも可能です。

みずほ銀行

みずほ銀行の法人向けサービスみずほeビジネスサイトでは、国内外の送金を一括管理する「スタンドードサービス」と外為取引のための「為替予約サービス」が提供されています。貿易関連の手形決済依頼なども行えるのが特徴です。

三井住友銀行

三井住友銀行の法人向けサービスWeb21では、海外との取引のためのGlobal e-tradeサービスが提供されています。価格面でのメリットとしては、海外への送金手数料が店頭の半額以下になります。また、貿易業務等で発生するドキュメンタリー取引についてもサポート体制が整っています。

新生銀行

新生銀行は海外送金サービスGoレミットを提供しています。このサービスは、元々イギリス系のLloyds TSB銀行が提供しているGo Lloyds(ゴーロイズ)の日本事業を吸収したものです。送金手数料は1件につき2,000円からとなります。振込先口座を事前登録して置く必要がありますが、複数口座への同時送金など柔軟性の高いサービスが特徴です。

楽天銀行

楽天銀行はインターネット専業銀行であり、低コストで運営されているため手数料も比較的安いです。送金額の大小にかかわらず、送金手数料が一律750円、海外中継銀行手数料一律1000円で利用できます。また海外送金シミュレーターを提供するなど、UI/UXの使いやすさや価格の透明性に気を配っている点が特徴です。

  

2. 海外送金代行サービスを適宜利用して手数料を安くする

2つ目のコスト削減策は、海外送金代行サービスを活用した方法です。

海外送金代行サービスは、銀行が提供する海外送金サービスとは送金システムが根本的に異なり、手数料が比較的安くなりやすいことが特徴です。一方で海外送金代行サービスは、送金額の上限やカバーしている国・地域に偏りがあるため、銀行のサービスと併用することがお勧めです。

以下、TransferWiseを例に海外送金代行サービスがどのように手数料を低く抑えているのかを解説します。TransferWiseでは、実質的な海外送金をできる限り回避し、代わりに同一国内での資金移動によって送金を完了できるように工夫しています。

例えば、日本に住む送金者がアメリカに住む受取者にお金を送りたい場合には以下のような処理が行われます。

(画像:TransferWise公式ホームページより)

Step 1 : ユーザー登録を行うと、TransferWiseが管理する各国通貨建ての現地口座を開設することができるようになります。例えば、ユーロ口座ならベルギー、ドル口座なら米国に、円口座なら日本国内に作成されTransferWiseが管理します。

Step 2 : 日本に住む送金者は、日本にあるTransferWiseの銀行口座にお金を振り込みます。

Step 3 :  振り込まれたお金から手数料を引いた額が、米国にあるTransferwiseの銀行口座から、実質的に国内送金という形で、現地に住む受取者の口座にお金が送られます

このように、Transferwiseでは「毎回の取引ごとに中継銀行を介した海外送金を行う」ということをしません。その代わり送金者と受取者が住んでいる国内で、TransferWiseの銀行口座から国内送金をそれぞれ行い、手数料コストを引き下げています。

他の海外送金代行サービスも、システムの詳細は異なりますが、国内での資金移動として処理できる取引を増やすことで実際の海外送金コストを抑えています。

  

海外送金代行サービスに関する日本の法制度

海外代行送金サービスは、日本の法制度上、「資金移動業者」に分類されます。資金移動業とは銀行業を生業としていない業者の中で、送金・為替取引を営んでいる業者のことを指します。

従来、資金移動業者は100万円を超える高額送金を取り扱うことができませんでした。そのため、取り扱い金額という関連からも、法人による利用は限定的なものでした。ただし、2020年6月の改正資金決済法によって、状況は変わりつつあります。

今回の法改正では、従来の100万円以下の送金を扱う第2種資金移動業者に加え、100万円を超える高額送金を取り扱うことのできる第1種資金移動業者が認められました。そのため、今後は海外送金代行サービスを活用した法人間の送金がより利用しやすいものになるでしょう。

  

海外送金代行サービス4選

TransferWise

TransferWiseは海外送金に特化したサービス設計がなされており、ビジネス・法人利用にも対応しているサービスです。

TransferWiseのメリットは、為替手数料が0円に抑えられる点が挙げられます。また直接国を跨いで送金を行うわけではなく、TransferWiseが各国に持つ現地口座間での国内送金によって送金を終えられる点が画期的です。そのため、中継銀行手数料もかかりません。

Paypal

Paypalはオンライン決済サービスを主に提供する企業ですが、海外送金サービスも提供しています。但し、銀行を活用した海外送金と同様に中継銀行手数料が掛かります。

しかし手軽さや送金スピード、認知度が支持され、日本では銀行の海外送金サービスの次に利用率が高いです。また、Paypalアカウントから銀行へのお金の引き出し金額が5万円以上、かつ米国以外の口座の場合は手数料が0円になる点も魅力です。但し、Paypalアカウントからの現金の引き出しは送金してから3営業日目から可能となります。

SBIレミット

SBIレミットはSBIホールディングスの子会社であり、SBIレミット口座を活用した「銀行送金サービス」と現金代理店受取サービスを提供しています。銀行送金サービスを利用できる対象国はまだ限定的ですが、アジアや南米、アフリカ地域への送金に強みがあります。中国、ASEAN諸国、インド、ブラジル、ペルー、ナイジェリア、ガーナなどが対象国になります。

一方、現金代理店受取サービスの方は幅広い国・地域で利用でき、送金から最短10分で現金を受け取ることも可能です。これは「10 minutes」サービスと呼ばれ、SBIレミットが提携する国際送金業者Moneygram社によって提供されます。マネーグラムが世界200ヵ国に展開する代理店にて、受取者が現金を直接受け取ることができます。

Pay Forex

Pay Forexでは、地域によっては中継銀行手数料が加算される場合があります。Pay Forexのメリットは、「スピード送金」対象国・地域への送金であれば原則24時間以内にスピード送金することができます。スピード送金に対応している通貨としては、ユーロ、ポンド、人民元、トルコリラ等があります。

加えて大口の外貨を送金する際、送金手数料については0円に抑えられる点が魅力です。例えば、米ドルなら5000USD以上で送金手数料が0円になります。

  

終わりに

ビジネスのグローバル化が進む中、海外送金の需要は増えています。海外に事業展開しようとしている企業、また海外に取引相手を既に抱えている企業は多いでしょう。海外の市場に打って出ることは、一層の収益獲得や企業のブランド確立にも大いに役立ちます。

しかし、海外とのお金のやり取りが増えるほど手数料も嵩んでいきます。場合によっては、収益の数十パーセントが国際送金のコストとして消えてしまうこともあります。しかし、厳しくサービス選定を行うことによってそのコストを収益の1割未満以内に抑えることも可能です。

これを機会に、読者の皆様が自社における海外送金のオペレーションを改善するヒントを見つけて頂けたら幸いです。