2021.09.07

競争入札とは?電子入札の実施方法、プロポーザル方式や総合評価方式などのメリット・デメリットについて解説

競争入札とは?電子入札の実施方法、プロポーザル方式や総合評価方式などのメリット・デメリットについて解説

競争入札・オークションは、購買手法として日本ではまだ広く普及していません。しかし、自社の調達プロセスを効率化したい、最適な業者を見つけたいと考える企業が増加するに従い、その需要は高まりつつあります。

本記事では一般競争入札や指名競争入札に加え、新たに登場しつつある総合評価方式、プロポーザル方式などのオークション手法も紹介します。そのうえで、各事業者が入札を行う際に踏むべき手順やメリット・デメリットをくわしく解説します。

TEXT BY Leaner Magazine編集部

     

1.入札とは?

入札とは、企業・行政機関・自治体の調達プロジェクトや工事・建設事業に対して、複数のサプライヤーがそれらプロジェクト・事業の見積もり価格を提示することを指します。この際、事業の発注者は価格の優劣や条件の総合評価に基づいて、どの業者に発注するかを決めます。

日本では、主に自治体や中央官庁の発注する公共事業や企業の物品調達において、入札が取り入れられています。民間企業がこれら案件を受注するには入札に参加し、発注者から選ばれる必要があります。

調達過程で入札を実施することは資材調達コストの削減や、原価低減の効果を期待できるため、近年企業でも注目され始めています。

入札は、年間22兆円近い規模を誇る巨大マーケットです。中小企業庁が公表している数字によると、平成29年度の入札による契約実績は国の機関で約7兆5,000万円、地方公共団体で約14兆5,000万円にも上ります。(平成30年度版「官公需契約の手引 施策の概要」より)

これらの入札は、一般競争入札と指名競争入札の2つのアプローチに分けることができます。それぞれの概要・特徴について解説します。

     

一般競争入札とは?

一般競争入札は、企業が資材等を調達する際、契約の内容や入札の参加資格を明らかにした上で、入札に参加したサプライヤーのうち「最も有利な条件」を提示した者と契約する入札方式です。

「最も有利な条件」の判断方法には、価格の安さを重視するものと、価格以外の要素も含めて評価するものとがあります。前者は「価格競争方式」、後者は「総合評価落札方式」と呼ばれます。

    

メリット・デメリット

一般競争入札のメリットは、調達手段の中でも、透明性・公平性・経済性がかなり確保されている点です。

企業によっては、調達プロセスで担当者とサプライヤーの不適切な関係や不明瞭な会計など、コンプライアンス違反に該当する事件が報告されることがあります。

しかし、一般競争入札を導入することで、内外に対して調達プロセスの透明性・公平性をアピールし、自社の評価をたかめることができます。また価格面でもサプライヤー間の競争が促進されるため、適切な価格で資材等を調達することができます。

一方で、一般競争入札のデメリットはその業務コストにあります。不特定多数のサプライヤーが入札に参加するため、それらサプライヤーが提案する商品・サービスの要件が実際に自社の要望に見合っているかどうかを判断するなど、事務負担が増えてしまうことが懸念されます。

そのため、一般競争入札を導入する調達案件には、プロジェクト予算が比較的大きい大規模案件が多いです。

     

指名競争入札とは?

指名競争入札は、発注する企業側はリストアップしたサプライヤーの中で、高評価を得られたサプライヤーのみが参加できる入札方式です。

指名競争入札は、企業の担当者側がサプライヤーを選定することが多いため、担当者とサプライヤーの癒着につながるような問題も起きえます。そのため「なぜその事業者を指名したのか」「なぜ別の事業者を指名しなかったのか」について明確な理由を示し、選定プロセスの透明性を高める必要があります。

一般的に指名競争入札に参加するためには、以下のような選定項目が用いられます。

  • 地域要件(事務所が指定のエリア内にある)
  • 実績要件(同様の実績がある)
  • 資格要件(会社また個人資格など)

メリット・デメリット

指名競争入札では、一般競争入札のように不特定多数のサプライヤーを募集せず、入札段階で参加サプライヤーの数を限定します。そのため、メリットとしては実施企業の事務負担を減らしつつ、入札方式の競争性を維持して調達価格を低減できる点が挙げられます。

一方、指名競争入札では参加サプライヤーが事前に担当者によって選定されるため、選定プロセスの透明性・公平性の面では一定の課題が残ります。しかし、業界で競合するサプライヤー数が少ない案件や、幅広いサプライヤーの参加が見込めない小規模案件については、低い業務コストで資材調達が行える指名競争入札が選ばれます。

      

入札と随意契約の違いについて

随意契約とは、サプライヤーを競争させることなく、個々の企業と値段・条件交渉を行う契約方式です。

次のような場合に、随意契約を結ぶことが多いです。

  • 入札の内容が競争することにそぐわない場合
  • 業務が緊急に必要であると判断される場合
  • 相場と比べ非常に有利な価格で契約を結べる場合

ただし、随意契約を結ぶ場合でも、なるべく2社以上の企業から見積もりを取ることが一般的には良しとされています。2社以上の企業に対して見積もりを行い、条件を比較することで、より自社の要件に合った契約を結ぶことができます。

見積もりについては、以下の記事をご参照ください。

相見積もり・見積もりとは?意味やメリット、マナーなどポイントを解説 | Leaner Magazine|リーナーマガジン

     

2. よく用いられる入札でのサプライヤー決定方式3選

この章では、入札においてサプライヤーを決定する方法として、競り下げ方式、総合評価方式、プロポーザル方式を解説します。

a. 総合評価方式

価格と価格以外の要素を合わせて評価するのが、「総合評価方式」です。総合評価方式では、あらかじめ定められた採点方法に基づいて行われます。企業の担当者は、サプライヤーの提案内容について企画点と価格点を算出し、それら評価項目の合計点が最も高かった事業者を調達先として選定します。

また企画点としては、発注者によって様々な評価項目が設けられています。

主な要素としては、商品やサービスの品質、安全性、環境に与える影響などが評価項目として設定されることが多いです。特に品質面での競争を促進することにより、事業の品質を向上させる効果が期待できます。また単純な値段による評価に基づかない分、サプライヤーのカルテル・談合の防止に効果がある点も評価されています。

一方で、総合評価方式を採用するデメリットは、価格面以外での評価項目の設定や計算方式を決める際に時間がかかり、業務コストがかさむ点です。従って、予算規模が大きく、失敗できない重要プロジェクトにおいて総合評価方式が採用されるケースが多いです。

総合評価方式の項目設定や計算方式については、以下の農林水産省のガイドラインをご参照ください。総合評価落札方式の概要 

    

b. 競り下げ方式「価格優先型リバースオークション」

競り下げ方式を活用したリバースオークションとは、「買い手が提示した一定条件の下で売り手が見積書を提示し、その中から契約を行うこと」を指します。企業にとっては、サプライヤーが同じ条件下で価格競争をしてくれる利点があります。

リバースオークションによって調達価格を適正化しやすい調達品目の特徴として、サプライヤーの数が多く、サプライヤー間の価格競争が激しいことが挙げられます。特に間接材など、価格がサプライヤ決定の重要な評価項目になる案件が向いています。

リバースオークションの詳細については、以下をご参照ください。

リバースオークションとは?メリット・デメリット、相見積もりとの違い、留意点・問題点まで徹底解説 | Leaner Magazine|リーナーマガジン

     

c. プロポーザル方式「企画競争入札」

さまざまな入札形式・発注形式のうち、特に発注内容が技術的に高度なサービスや、専門的な技術が要求される製品に利用されるのが「プロポーザル方式(企画競争)入札」です。サプライヤー側は高い知識や企画力を要求されるため、ハードルは高いですが、提示した価格だけで落札者が決まるわけではないため、受注すれば大きな利益が見込めます。

プロポーザル方式は、価格面以外も評価する点で総合評価方式に似ていますが、より柔軟性の高い選定方式です。価格だけでなく、製品規格やサプライヤーの能力調査等が必要な案件に向いており、企業では主に直接材の調達に用いられます。

総合評価方式では、あらかじめ選定基準が決められ、各入札業者の提案が一斉に提出・評価されます。一方で、プロポーザル方式では各サプライヤーとの協議・交渉次第で、発注する要件等について変更が可能です。 また交渉が失敗した際に、次点となる業者との交渉に移るので、「コンペ方式」とも呼ばれます。

     

3. 入札の具体的な手順・行い方

      

a. 紙入札か電子入札を選択する

紙入札について

紙入札とは入札日時に応札する業者が集まり、契約担当者の前で入札書を提出しその場で開札します。原則として、その場で最も入札書の金額が安い業者が契約相手として決まります。

企業が入札を活用した調達を行う場合には、コスト削減の観点から、基本的に電子入札が利用されています。また中央官庁や都市部の公共事業における応札でも、電子入札への移行が進んでいますが、地方自治体では紙入札が採用されているケースが多いです。

電子入札について

電子入札とは入札参加登録を完了したサプライヤーが、インターネット上で企業案件に対して入札を行う仕組みです。紙入札に比べ入札当日に企業のオフィスを訪問する必要もなく、業務コストの削減が期待できます。 

紙入札を行う際には、サプライヤーが会場に一堂に介し、サプライヤー間の談合がおきる懸念があるため、入札の公平性・透明性を高める制度として期待されています。

     

b. 入札要請を行う

入札要請(ITB)とは企業の発注内容が明確かつ簡潔に規定された入札案内書です。発注企業はこの案内書に要求事項と関連する機能要件などを記します。

      

c. サプライヤーの応札参加意思表明「EOI」を受けつける

入札説明書に記載された要領に従って、参加書類をサプライヤーから受け取り、審査します。必要な書類がすべて提出され、必要要件を満たすことが確認できたサプライヤーのみが入札に参加できます。

     

d. 応札書類公開開札手続き

最後に、入札会場やパソコンのシステム上で入札結果が発表されます。落札できた企業は、その後発注者との契約手続きに移ります。

      

4.サプライヤーが競争入札に参加する際の注意点

これまでは、企業が調達案件において入札を執り行う際のメリット・デメリットや手順について解説してきました。

一方で、これら企業が入札に参加するサプライヤー側になることもあり得ます。この章では、そういった企業が入札参加時に注意すべき点について解説します。

入札未経験の企業にとって重要なのは「落札」の実績を積み重ねることです。そのためには、ある程度落札しやすい案件を集中的に狙う必要があります。

しかし多くの企業は国土交通省などの官公庁や、大企業の大規模入札案件を狙いがちです。しかし、こうした「有名機関」の案件は競争率が高いため、あまり効率の良いやり方とはいえません。

そこでおすすめなのが、知名度の低い機関の入札案件です。競争入札には知名度が低いけれども、実は自社の商品・サービスに合った案件があります。そのため、情報収集を徹底的におこなって、自社に見合ったプロジェクトの受注を目指すのが良いでしょう。

       

終わりに

巨大市場を形成する「入札」は、公的機関や自治体によって頻繁に利用されていますが、企業による利用事例はまだ多くありません。

しかし入札を活用した調達方式は、資材調達コストの低減やより自社に見合ったサプライヤーとの出会いなど、多くのメリットを期待することができます。

また、ひとえに入札といっても、様々な選択肢があり、自社の状況に合わせて適切な手法を選択できることも魅力です。

ぜひこれを機に自社での「入札」を活用した調達方式を検討されてはいかがでしょうか。

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