2020.12.04

製造業のコスト削減|製造原価のコストダウン、材料費や労務費の削減アイデアと事例について

製造業のコスト削減|製造原価のコストダウン、材料費や労務費の削減アイデアと事例について

製造業・製造原価のコスト削減というと、「主要な材料を安く調達する」ことを思い浮かべる人が多いでしょう。たしかに材料費は重要であり、各企業でも管理・削減に努めています。しかし、コストの全体像や直接費・間接費の違いを理解することで、さらに利益率を改善できます。

今回の記事では、製造原価の意味・特徴を説明した上で、製造各社がなかなか取り組めていない「間接製造費」(材料・労務・経費)についても解説します。また、コスト削減の成功事例もあわせて紹介します。

TEXT BY Leaner Magazine編集部

   

製造原価とは?

製造業において、製品を作る過程で生じるコストは「製造原価」と呼ばれています。製造原価は以下の2つの費用に分けられます。

「製造原価」=「直接製造費」+ 「間接製造費」

工場の中では、商品ごとに複数の生産ラインが設けられています。直接製造費とは、個々の商品の生産ラインで生じる製造コストのことです。一方で、間接製造費は複数の生産ラインに跨って生じる生産コストを指します。

これらの直接製造費・間接製造費は、それぞれ「材料費」「労務費」「経費」の3つのカテゴリーに分けられます。

材料 労務 経費
直接 直接材料費 直接労務費 直接経費
間接 間接材料費 間接労務費 間接経費

  • 直接材料費:原材料の素材費,部品費など
  • 直接労務費:個々の生産ラインにいる機械工や組立工の賃金など
  • 直接経費:それぞれの商品を外注加工する時にかかるコスト

  • 間接材料費:間接的にかかる材料費。ドライバーやスパナ、潤滑油などの消耗品・器具など
  • 間接労務費:商品の製造とは関わりのない部分で生じる人件費や社員の賞与・福利厚生など
  • 間接経費:機械設備の減価償却費や、水道光熱費、保険料、交通費など

これら6つの費目の中で、「直接材料費」は製造業の各社でも、購買・調達部門を通じて管理していることが多いです。また「直接労務費」と「直接経費」は生産ラインごとに管理できるため、比較的コスト最適化が進んでいます。

一方で、複数の生産ラインにまたがって発生する間接製造費(材料・労務・経費)はコスト管理があいまいで、コスト削減が進んでいない企業も多いです。

しかし間接製造費を適切に管理することは、収益の改善に大きく貢献します。間接製造費は、様々な商品製造に用いられる費目が多いため、各社にとって共通したコスト削減の打ち手が存在しているのが特徴です。今回の記事では、間接製造費の削減について、それぞれ概要とコスト削減方法を解説します。

   

間接材料費とは?

間接材料費は、製造原価の一部であり、製品を生産するときに間接的にかかる材料費です。たとえば、製品で使用する塗料や接着剤などは、間接材料費になります。

間接材料費は、大きく「工場消耗品費」「消耗工具器具備品費」「補助材料費」の3つに分かれます。

工場消耗品費とは、生産活動を行うために必要な消耗品にかかる費用のことです。工場消耗品費の例としては、機械設備の維持に必要な潤滑油やネジなどがあります。

消耗工具器具備品費は、様々な生産ラインで作業員が利用する備品の費用です。例としては、ドライバーやスパナなどの備品が挙げられます。

補助材料費とは、生産ラインにおいて補助的な役割を果たす材料費を指しています。補助材料費の例としては、塗料や染料、化学触媒があります。

   

間接材料費を削減するための手順

一般的に、材料費を削減するポイントは、①できるだけ安く必要な分だけを仕入れ、②不要な在庫を抱えないことにあります。

①を実現するためには、サプライヤーごとに材料費の調達価格をもう一度見直すことがお勧めです。具体的には相見積もりを通じた仕入れ先の見直しや単価の交渉、不要な在庫を厳しく統制するなどの管理の見直しが考えられます。

特に相見積もりと消耗品の単価交渉は、コスト削減の打ち手として有効打となり得ます。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

相見積もりとは?意味やメリット、マナーなどポイントを解説 | Leaner Magazine|リーナーマガジン

②を実現するためには、生産管理システムの導入がお勧めです。生産管理システムは、製造プロセスの進捗や納期・出荷フローを管理するためのITシステムです。このシステムを導入することで、余剰在庫が削減でき、会社のキャッシュフローの安定化にも繋げることができます。

生産管理システムを提供している企業は、日本国内でも数十社に登ります。また、システムの運用の観点では、「ソフトウェア・設備を一括購入する方式」と「クラウド上で月額課金制で利用する方式」に大別されます。

設備投資予算が潤沢にあり、生産管理システムに大きく舵を取りたい場合は、一括購入がお勧めです。新規プロジェクトとして徐々にスタートしたい場合、クラウドベースの月額課金制を利用することで、財務上のリスクを軽減することができます。

   

間接労務費とは?

間接労務費とは、商品の製造には関係がないところで人材にかかった費用であり、製造原価です。間接作業賃金、従業員の賞与や手当、福利費などが該当します。

   

間接労務費を削減するための手順

間接労務費を削減するポイントは、「業務量の適正化」です。

労務費の削減というと、大規模なリストラを思い浮かべる方が多いでしょう。確かに人件費が間接労務費に占める割合はとても大きいため、人員カットによって労務コストを短期的に減らせます。

しかし一度リストラを敢行してしまうと再び人員を増やそうとした際に莫大な採用費がかかるなど、大きな副作用をもたらします。またそれぞれの部署は、人員削減にともなう業務の支障を経験することになり、職場の雰囲気にマイナス効果を与えます。

こうした大規模なリストラを避けるために、まずは「業務量の適正化」を検討いただくことが大切です。これは「業務改革」(BPR)と呼ばれるものであり、業務プロセスのフローチャートを作成した上で、業務のムダを見直すことで進めます。

まずはこの業務改革をおこない、社員の仕事の質を向上させるべきです。そして、仕事の質が向上することで、残業時間を縮小し、不必要な労務費(人材派遣・外注費)を削減できます。

その上で、まだ業務プロセスにムダが多い場合には、人員配置の見直しや要員計画を段階的に行うことが労務費の適切な削減方法となります。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

人件費削減入門|業務改革と要員計画がカギ。安易なリストラに走らないための対策を解説 | Leaner Magazine|リーナーマガジン

   

間接経費とは?

製造業の間接経費は、機械設備の減価償却費など、商品の製造に間接的に関わる費用を指します。水道光熱費や各種保険料、通信費や製品の運送費用・保管料などもここに含まれます。

   

間接経費を削減するための手順

こうした間接経費の中でも、特に注目するべきなのが工場の操業にかかる経費ランニングコスト)です。工場にかかる経費で見逃されている費用として、水道光熱費・警備費・各種保険料・運送費・保管費などが該当します。

たとえば、工場を操業する際に莫大な水道光熱費がかかっているのですが、コスト削減対象として扱っていないケースが見られます。特にLEDランプの導入や電気・ガス代のセット契約への移行は、コスト削減策として取り組みやすいため、お勧めです。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

製造業のランニングコストとは?設備費、水道費、光熱費、警備費の削減事例・アイデアを徹底解説 | Leaner Magazine|リーナーマガジン

製品の運送費・保管費にあたる「物流コスト」は多くの企業で意識はされているものの、具体的にどのような打ち手があるのかよくわからず、削減に踏み込めていない例が多々あります。この際、運送費用と保管費の適正最安価格を知ることで、コスト削減余地を把握することが大切です。その上で、複数の業者と単価の値下げ交渉を行い、自社に有利に契約締結を目指すことができます。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

物流コストとは?輸送費や保管費のコスト構造、削減・改善事例やアイデアを解説 | Leaner Magazine|リーナーマガジン

      

終わりに

製造業は大きなサプライチェーンのもとで生産活動を行っています。

購買・調達部門で管理している、製造に直接関わる費用項目だけでなく、様々な生産ラインに跨って発生している費用に目を向けることで、大きなコスト削減余地を発見できる機会があります。

ぜひこの記事をきっかけに、一度自社の製造原価や間接製造費を見直し頂く機会を持っていただけたら幸いです。

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