【完全版】価格交渉を有利に進める値下げのコツ。プロが実践する3つのステップ

ビジネスをしていると、何かの製品・サービスを購入する場面が多くあるかと思います。こういったとき、できるだけ安価に調達したいものですが、皆さんは適切な方法で、有利に価格交渉を進められているでしょうか?

また価格交渉は、単に値段が下がればいいというものでもありません。取引先と、中長期を見据えた関係性をつくりながら、良い条件を獲得することが求められます。

難しいように聞こえますが、価格交渉はポイントを抑え、簡単なテクニックを実践することで、誰でも有利に進めることが可能です。

本記事では、価格交渉の決め手となる事前準備の方法から、価格交渉時に必要なスキルまで解説します。

TEXT BY Leaner Magazine編集部

ビジネスにおける価格交渉は難しい?よくある問題点を解説

ビジネスでは、価格交渉が必要となるシーンが多々あります。

予算との兼ね合いで安く製品を購入しないといけなかったり、契約条件が長い期間見直されていないなどの理由で、価格交渉を経験した人も多いのではないでしょうか。

しかし、価格交渉をどのように進めればいいか分からず、納得いく結果にならなかったことから、「価格交渉は難しい」と感じている人が少なくないようです。

価格交渉が難しいと感じる大きな原因は3つあります。

1つ目は、「そもそも価格交渉に向いていない調達物に対して価格交渉を行なっているから」です。値下げする余地がほとんどない商品に対して、頑張って値下げ交渉をしたとしても、削減できる可能性は小さいでしょう。

2つ目に、「価格交渉に役立つ事前準備をしていないこと」が挙げられます。例えば、相手の状況を事前に把握せずに挑んでも、感情任せの価格交渉しかできません。これでは、納得がいくまで価格を下げることが難しくなってしまいます。

最後に、「価格交渉時のスキルが足りないケース」です。価格交渉は、様々な状況を想定し、それに応じた交渉手段を取る必要があります。いくつかの対処法を学んでおくことが解決策になります。

以上の3つの問題を、どのように解消していべきか、1つ1つ解説していきます。

  

Step1:そもそも価格交渉をするべきかどうか見極める

コスト削減に取り組む際、すぐに価格交渉に取り組んでいませんか?

価格交渉は、交渉する余地がある場合にのみ有効です。

交渉する余地が全くないサプライヤーに対して何度も価格交渉を試みても、あまり効果はありません。サプライヤーが価格交渉しやすい相手なのかを見極めることが必要です。

そこでまず見る必要があるのは、「調達物の粗利率」と「調達物のサプライヤーが置かれている競争環境」です。

まず、粗利率とは「売上高から売上原価を引いた『粗利』が占める割合」のことです。粗利率が大きいほど、事業から得られる利益が大きく、逆に製造に必要なコストが小さいことを示します。

すなわち、粗利率が大きい製品ほど、価格交渉によって下げることができる金額の余地が大きいということになります。逆に、粗利率の低い製品に対して価格交渉を行ったとしても、得られる成果は限定的となるでしょう。

次に、サプライヤーが置かれている競争環境を見ます。サプライヤーにとって競合となる企業が多くいる場合、多少の価格交渉は許容しようとする力学が働きやすくなるため、値下げが行われる可能性が高くなります。よって、競争環境を見ることにより、価格交渉がしやすいのかどうかを判断できます。

競争環境には事業の成長率や、市場シェア率など様々な指標があります。サプライヤーを取り巻くマクロ環境、ミクロ環境の両方を見ることが必要です。

以上から、「粗利率が高く、サプライヤーが置かれている競争環境が厳しい」場合には、価格交渉が非常に有効です。

価格交渉に向いている主な調達物としては、下の表にあるように、携帯電話や電力代、また新たに市場へ参入してきたサービスなどが挙げられます。自社が調達しようとしているものが、交渉しやすいものかどうか、まずは確認しましょう。

  

 

  

Step2:価格交渉前に準備すべき4つのポイント

価格交渉は、事前にどれだけ交渉に優位な材料を集めて、臨むかが肝となります。

具体的には、以下の4つの事前準備をしましょう。

  • 市場価格情報を調べて比較する(ベンチマーク比較をする)
  • 調達物の製造にかかっているであろうコストを調べる(原価積算)
  • 調達量を明確にし、1つのサプライヤーに集約する
  • 期間や発注頻度を調整する

それぞれのポイントを具体的に説明していきます。

  

ポイント1:市場価格情報を調べて比較する(ベンチマーク比較)

まずは、調達物の市場適正価格をリサーチします。これを行うことで、契約しようとしている調達物の価格が市場価格と比較して高いときに、「他社ではこの単価で契約が行われている」「他のサプライヤーからこの価格で条件を提示してもらっている」といったことを示唆することができます。これにより、交渉を優位に進めることが可能です。

市場価格を調べる方法の中で一般的な手法に、「複数の同業他社に相見積もりを取ること」があります。

例えば、契約したいサプライヤーの価格が自社の希望価格に達しない場合、「A社は御社より安く価格を提示してくれています」と、強い立場で交渉できますよね。

相見積もりを取ったうえで交渉をする際は、以下の4点を押さえておくことが重要になります。

  • 同条件での見積もりを取る
  • 予算・納期を伝える
  • 他社がどの程度安い見積もり価格なのかを事前に伝える
  • 料金の内訳を確認し、再検討したい部分を伝える

まずは、見積もりがきちんと比較可能なものになっているのか、確認します。数量や契約期間などに差がある場合、どちらが安いのかを公平に判断することができません。

また、相見積もりをとる企業間で、予算・納期を統一することが必要です。

予算・納期が異なると、場合によっては見積もり金額が変化する可能性があります。きちんと必要事項を伝えることが必要不可欠です。

また、他社の条件を事前に伝えたり、出てきた見積もりの内訳を確認し、場合によっては再見積もりをとることも忘れずに実施しましょう。

価格交渉をされる側としても、顧客を逃して契約がなくなるくらいなら、価格を下げて契約をした方がいいケースもあります。そのような事情を理解し、無理のない範囲で、しかし毅然とした姿勢を保つことが、交渉の鍵となります。

  

ポイント2:調達物の製造にかかっているであろうコストを調べる(原価積算)

2つ目のポイントは、「サプライヤーがサービス提供に要するコストを推計する(原価積算)」ことです。

原価積算によって算出されたサプライヤー側のコストと実際の見積もり価格を比べることにより、交渉余地をある程度推計することができます。

  

  

原価を推計するステップとして、以下3つの手順を実践しましょう。

1)見積もりの内訳を見る

見積もりを取る際に、各コストの内訳価格を見ます。これにより、調達物の大雑把なコスト構造を把握します。
  

2)原価を積み上げる

原価を、算出可能な粒度まで分解します。上図のビル清掃費の場合、コストを人件費、b品代、間接コストに分け、それぞれの項目を積み上げていきます。
  

3)理論価格を出す

実際に各要素に数字を入れ、理論価格を計算します。この際に当てはめる数字は、一般的な市場価格の数字を当てはめます。市場価格は、積算資料などを参照するとよいでしょう。
  

より詳しい原価積算の方法は、以下の記事を参考にしてください。

  

ポイント3:調達先を1つのサプライヤーに集約する

3つ目のポイントは、「スケールメリットを効かせて、契約条件を適正化する」ことです。

サプライヤーの製品提供にかかるコストは、大きく固定費と変動費の2つに大別することができます。図の通り、変動費は販売数量に対して比例的に増加する特徴があり、逆に固定費は、販売数量に関わらず一定です。したがって、販売数量が増えるにつれ、1つのサービスあたりにかかる固定費は減っていきます。そのため、価格交渉においては、発注数量を増やすことで支払い単価を下げる努力が重要です。

  

  

発注数量を増やすためには、分散している発注先を1つに集約することが効果的です。そのために、今までの契約状況をきちんと把握し、分散発注している取引はないかを確認しましょう。調達状況を可視化した後に、必要な調達量だけを集約することで、より契約条件が良くなります。

  

  

  

ポイント4:期間や発注頻度を調整する

4つ目のポイントは、「契約期間や発注頻度を調整すること」です。

サプライヤーにとって都合の良い時期や、手段で購入することで、価格を下げられる可能性があります。

たとえば多くの企業では、その期の売上目標値を定めています。そのため、決算期を迎えるにあたり、売上数値が目標に到達しない可能性がある場合には、決算月に目標を達成するため、多少割引をしてでも取引を行うという力学が働きやすくなります。

また、長期在庫による汚損した製品を翌期に持ち越さないように、決算期に割引を行って消費しようとすることもあります。

よって、サプライヤーの決算時期に合わせて製品を購入することは、価格交渉を有利に進めるために有効です。

他にも、今まで1ヶ月に1度発注していた製品を、3ヶ月に1度の発注にまとめるなど、工夫次第でノーコストで価格交渉を実現する方法もあります。1回あたりの発注量が増えるので単価を下げることができる上、サプライヤー側も製品を発送する際にかかる発送費を抑えられるので、双方メリットがあります。

このように、決算時期や発注手段を見直し、先方が妥協できそうなポイントを探しておくことも、価格交渉につなげるために有用でしょう。

  

Step3:実際の価格交渉時に役立つ3つのスキル

実際の価格交渉では、思い通りにいかないことも多々あります。そのような際に、交渉スキルを知っているかいないかが、成否を分けることもあります。覚えておくべき3つのスキルを紹介していきます。

  

スキル1:発注条件の緩和

価格交渉で上手く行かない場合は、「指定している発注条件を変更する」ことにより、価格を落とすことができるかもしれません。

発注条件を変更するとは、製品の仕様を変えることや、プランを変えることが該当します。例えば、製品のスペックを少し落とす、などが挙げられます。これによって、サプライヤーに安価な価格を打診することができます。

発注条件を緩和するときは、まず社内に対して、その要件が本当に必要なものかどうかをヒアリングすることが求められます。その上で、不要だと判断した要件を排除し、発注条件を妥協することにより、社内に負担なく価格を抑えることができます。

  

スキル2:競争環境の醸成

サプライヤー側の競争環境をさらに厳しくすること」も有効なスキルです。

価格交渉先のサプライヤーは、多くの場合、競合他社がいます。これらの競合他社との競争環境をさらに強めることで、より良い価格を引き出せる可能性があります。

競争環境を醸成するための工夫として、2つの手軽な方法があります。

1つ目は、「競売・入札制度の導入」です。相見積もりを取っている企業に対して競売制を設けることにより、競争環境が目に見える形になり、より良い価格を引き出しやすくなります。

2つ目は、「同一サービスだけでなく、類似サービスにも相見積もりを取ること」です。例えば、携帯電話で大手キャリアのみに相見積もりを取る場合と、MVNO(格安SIMを提供する事業者)も含めて相見積もりを取る場合では、価格交渉の成果に差が出てきます。

このように、社内のニーズに合致する類似サービスも含めてリサーチし、相見積もりを取ることにより、より価格交渉がしやすくなります。

  

スキル3:決裁権限者を引き出す

価格交渉を行なっていても、サプライヤー側の決裁権限者にその旨が伝わっていないと、うまく交渉ができません。実際、サプライヤー側の担当者が決裁権限者に伝えていないことにより、交渉が進展しないケースも多いです。そのような状況の解決策として、「自社の役職者を交渉の場に出し、先方の決裁権限者を引き出す」方法が挙げられます。

自社の役職者を交渉の場に出すことで、サプライヤー側の認識における会議の重要度が上がり、決裁権限者が出てくる場合が多いです。直接、決裁権限者と交渉することにより、スムーズな価格交渉ができます。

  

ポイントをおさえ、適切な価格交渉を実現しよう

価格交渉の際に気を付けるべきポイントをご理解いただけましたか?

非合理的な条件を突きつけての価格交渉は、不毛なやりとりになるばかりでなく、取引先との関係性を傷つけることにも繋がりかねません。

解説してきたように、価格交渉は、その製品が交渉余地のあるものなのかをきちんと把握した上で、事前準備をしっかりと行うことが基本です。その上で、交渉条件をサプライヤーに正確に伝え、必要なスキルを実践することが、交渉を有利に進める秘訣です。

本記事で紹介した、ポイントを再度見直し、効果的な価格交渉に取り組んでみてください。