2019.11.13
コスト削減の基本 「ユーザーマネジメント」の進め方とポイント
利益創出の基本は「売上の増加」と「コストの削減」です。双方のバランスを保つことで、経常利益を確保することができます。
しかし、業績がいい時期にないがしろにされてしまうのが、コスト削減です。なかでも「コスト削減」の方法論は、あまり世に出回っていないのが現状です。
今回の記事では、コスト削減のプロが実践する手法「ユーザーマネジメント」について解説します。
TEXT BY Leaner Magazine編集部
コスト削減の基本「ユーザーマネジメント」とは
「ユーザーマネジメント」は、多くの企業で取り組まれているコスト削減の手法です。
具体的には、社内に働きかけて支出を最適化、使いすぎを是正する方法を指します。
実現するためには、社内への働きかけや、継続的なモニタリングが必要で、効果が出るまでに時間がかかるケースが少なくありません。しかし成功すれば、中長期で持続的かつ大きな削減効果を期待できます。
ユーザーマネジメントはどのように進めるのか
ユーザーマネジメントの方法について、詳しく解説していきます。ユーザーマネジメントの方法には、大きく4つのアプローチが存在します。
最良条件へのサプライヤ集約
「最良条件へのサプライヤ集約」とは、同じ費目内で複数のサプライヤーに対して発注をしている場合に、最も条件の良いサプライヤーに集約していくことで、コストを削減するアプローチです。
各サプライヤーに対して「何を」「いくらで」「どれくらい」発注しているかを比較し、最も条件の良いサプライヤーに多く発注するよう、調整を行っていきます。
サプライヤーに働きかけることで契約を見直し、経費を削減する「サプライヤーマネジメント」との違いは、サプライヤーと直接条件の交渉をせずとも、社内の取り組みで削減アクションが実現できる点にあります。
※サプライヤーマネジメントについて詳しく知りたい方はこちら
分散発注の是正
「分散発注の是正」とは、ばらばらに調達してしまっている購買活動を是正することで、コストの無駄を削減するアプローチです。
たとえば文房具を調達する際に、インターネットサイトの“A店”を利用している企業があるとします。しかし、ある営業部では、コンビニエンスストアの“B店”で購入することがあったり、バラエティショップの“C店”でも購入されていたり、価格の違う店舗でバラバラに調達を行ってしまっていることがよくあります。
“A店”でまとめて調達をしていれば安い価格で調達できていたにも関わらず、分散して購入しているために無駄が発生してしまっている。一度あたりの出費は微々たるものですが、積み重なることで無視できない金額になります。
無駄が大きそうな特定の費目や組織に目星をつけ、調達しているサプライヤーの数が分散しすぎていないか、確認してみるとよいでしょう。
プラン・購買品の見直し
「プラン・購買品の見直し」とは、購買品のスペックが、量的・質的に自社の利用水準に適したものかどうかを見極め、適切なプランに見直していくアプローチです。コスト削減と聞いて一般的にイメージされやすいアプローチの1つと言ってよいでしょう。
自社の利用水準を適切に把握した上で、買いすぎていたり、オーバースペックであったりする場合、見直しを行っていきます。
特に、近年はSaaS(Software as a Service)を利用する企業が増えていますが、必要以上のスペックを契約してしまっているケースが少なくありません。
金額規模が大きく、無駄がありそうな購買品を中心に、自社の利用状況とプランの確認を行ってみるとよいでしょう。
使いすぎの是正
「使いすぎの是正」とは、部門・組織や個人に働きかけることで、無駄な経費を抑制していくアプローチです。
具体的な打ち手は、費目ごとに多岐に渡ります。しかし、基本的には3つのステップにまとめることができます。
- そもそも「使わない」工夫をする
- 使用状況を「見える化」する
- 使いすぎに対して「アクション」をとる
たとえば、コピー費であれば、標準設定を白黒にしたり、両面印刷にすることで、無駄な印刷を予防することができます。(使わない)
また、複合機を個人のIDと紐づけることで、組織ごと、個人ごとの印刷量を可視化することが可能です。(見える化)
こうして可視化したデータを分析すれば、印刷枚数が多すぎる事業部や、カラー印刷比率が高すぎる部門を特定し、使いすぎを抑制することも可能です。(アクション)
具体的な打ち手は費目ごとにばらばらですが、この3つのステップや考え方は共通です。まずは対象とする費目を決め、上記のステップに従って施策を検討してみるとよいでしょう。
ユーザーマネジメントでコスト削減を実現するために
ユーザーマネジメントによるコスト削減を実現するには、何となくの「勘」ではなく、定量的な「データ」に基づいた仮説をもとに、適切な施策を実行していくことが何より重要です。
「あの事業部が使っていそうだから」「カラーコピーを使っている従業員が多い気がする」といったような、感覚的な理由から出発してしまうと、望ましくない施策を実行してしまう可能性があります。
また、現場従業員の反感を買ってしまったり、協力してもらえなかったりと、成果を得られずに頓挫してしまう危険性もあります。
このため、「いつ」「何を」「どの組織・個人が」「どこから」「どうやって」「どれくらい」調達しているかをきちんと見える化し(5W1H)、モニタリングしていくことが、ユーザーマネジメントにおいては非常に重要なのです。
効果的なコスト削減を実現するために、まずは一度、自社の支出状況を分析してみてはいかがでしょうか。
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