「塵も積もれば山となる」経費で損する会社、得する会社 #大平裕介の経費削減入門

「意外と知らない経費削減のあれこれ」をお伝えするLeaner Magazineでは、経費削減に関する情報を定期的に発信しています。

本記事は、アメリカ合衆国・シカゴを本拠とするコンサルティングファーム・A.T.カーニーで経費削減を担当していた元コンサルタントであり、現在はLeaner Technologiesで代表を務める大平裕介に経費削減のいろはを聞いていく連載「大平裕介の経費削減入門」の第一弾です。

「経費削減は大切」と言いながらも、日本は世界的に経費削減意識が低い国です。「その道のプロ」がいないために、コピー機や社内用の携帯電話を、不当に高い金額で売りつけられてしまっていることもあるのだとか。

大平は「経費削減に取り組む以前に、まずは実態を把握すべき」だと語ります。「海外旅行に行った日本人が、旅先でお金をボラれている」に近い現象が頻発している“闇の経費”について、お話を聞いてきました。

構成:オバラ ミツフミ

オバラ:前職のA.T.カーニーでは、当時最年少でアソシエイトへ昇進した経験を持つ“経費削減のプロ”大平(Leaner Technologies代表・大平裕介)さんに、経費削減のあれこれを語っていただく連載を始めることになりました。

当初は「大平裕介のLeanerやってる?」をタイトルにしようかと考えていましたが、編集部の上司に「あまりにもナメすぎ」との叱責を受けたので、「大平裕介の経費削減入門」と題し、お話を伺っていきたいと思います。

大平:連載タイトルはぶっちゃけ、なんでもいいです。よろしくお願いします。

オバラ:早速ですが、本題です。「コスト削減が大事」という話はよく聞きますし、そのメリットもよく分かります。その中でもなぜ、大平さんは「経費削減」にフォーカスした事業を展開されているのでしょうか。

大平:連載の初回ということもあり、丁寧に説明しますね。

経費とはつまり、「コスト」の一部です。コストにもいろいろあり、人件費や製造原価、販促費なども含まれます。それぞれに削減方法のセオリーがあり、たとえば人件費を削減したいと思ったら業務効率化に取り組むことが挙げられます。販促費を削減したければ、ROIをトラッキングして、非効率的な施策をストップすればいいですよね。

ただ人件費や販促費、原価の削減は、クオリティとの兼ね合いを考えなければなりません。たとえばiPhoneをつくるときに、画面を現行の素材より20%ほど安価のものにしようとすると、反応速度が遅くなってしまう可能性があります。仕事を外注するエンジニアさんの人件費を抑えると、開発能力が落ちてしまうかも知れません。

つまり安易に削減してしまうと、売上高によくない影響を与えてしまう可能性があるんです。ただ、経費を削減するだけなら、そうした影響はほとんどありません。つまり、やらない理由がないんです。やるだけで経常利益を確保できるので、ちゃんとその事実を伝えたいと思い、Leanerを立ち上げています。

オバラ:なるほど。でも、企業の大半の人が「経費削減をしたほうがいい」ことくらい分かっていますよね?

大平:もちろん「なんとなく」は分かっていると思います。でも、実際に経費削減に本腰を入れている企業は少ないです。というのも、経費は他のコストと比べて1費目あたりで下げられる金額のインパクトが少ないから。またプラスアルファでいうと、専門家がいないので、やったところでどれだけ安くなるかを想像できず、後回しになってしまっているんです。

オバラ:専門家というと…?

大平:たとえばの話ですが、企業のマーケティング担当者は、販促費の下げ方を知っているはずです。人事部長であれば、人件費の下げ方を熟知しているでしょう。つまり、社内に「その道のプロ」がいるのです。

ただ日本の会社には、大抵の場合「経費のプロ」が存在しません。コピー機や携帯電話といった経費に精通した人材がいないため、結果的に、いつも削減の余地が残っています。着手さえすれば安くなりますし、売上への影響も少ないのに、誰もやっていない。これが、経費削減の現状です。

オバラ:そうなんですね…。「分かっちゃいるが」が経費削減だと。でも、規模の大きな企業で本気の経費削減をしたら、とんでもない額になりますよね。

大平:実態は分かりませんが、規模の大きな会社だと莫大な額になると思いますよ。ただ日本は特に、漠然とした先入観から、経費削減を甘く見がちなんです。

オバラ:たしかに僕も「経費削減」と聞くと、ボールペンとか想像しちゃいました。あんまり意味ないだろうなって思いましたね。

大平:ですよね。なんとなく「意味なさそうだな」って思いますよね。これ、闇ですよ闇。ちなみに聞きますが、社内で購入しているボールペン1本の値段って分かりますか?

オバラ:100円ショップで10本入りが変えるので、1本10円。でも流石にそれよりはいいモノを使っているはずなので、30円…とかですかね。

大平:といった形で、誰も価格を知らないんですよね。つまり、適正価格が分かっていないんです。こうした“闇の経費”はいくつもあります。コピー機の値段、電気代、携帯電話の通信料…「塵も積もれば山となる」ですよ。

オバラ:べらぼうにお金を取られていることとか、全然ありそうです。

大平:あります、あります。僕の感覚でいうと、こんなにも情報の非対称性があるマーケットは存在しないと思います。提供者と購入者が、プロと素人の構図になってしまっているんです。

売る側の人だけが情報を持っていて、買う側の人はど素人。表現が適切か分かりませんが、「海外旅行に行った日本人が、旅先でお金をボラれている」ことと近い状態と言わざるを得ないことも少なくありません。

だから、今すぐにでも「経費削減」に取り組んだ方がいいと思います。それだけで、適切な買い物ができているかどうかを検討できるので。

構成担当:オバラ ミツフミ

94年秋田出身、株式会社モメンタム・ホース所属。構成担当に『転職と副業のかけ算』(moto)『選ばれる条件』(木村直人・エザキヨシタカ)『10年後の仕事図鑑』(堀江貴文・落合陽一)。

https://twitter.com/ObaraMitsufumi