[Leaders Talk vol.1]SAPジャパン – Leaner対談~日本ではなぜ間接費への意識が低いか~

日本を代表する経営者とマーケットの未来を語るLeaders Talk

第一弾は、基幹システムであるERP分野において世界一のシェアを誇る大手ソフトウェア企業 SAP ジャパン バイスプレジデントの佐藤 恭平氏との対談をお届けする。(全4回)

グローバル売上約250億ユーロ(約3兆円)を超える(2018年末時点)大企業で市場を席巻したかに見えるSAPだが、日本の間接費マーケットはまだまだ白地が多いと語る佐藤氏。対談初回となる今回は、日本市場の間接費への意識とその構造について語った。

佐藤 恭平 ■SAPジャパン株式会社 

SAPジャパン株式会社(以下、SAP)バイスプレジデント、調達・購買ネットワーク事業本部長

1998年SAPに新卒入社後、ボストンコンサルティンググループ(BCG)、マイクロソフトを経て、
SAP再入社。ソフトウェア企業での開発、事業企画及び営業リードとしての経験と戦略コンサルタントのバックグラウンドを生かし、最先端のデジタルと経営に関するさまざまな企業の様々な先進的取り組みを主導

SAP の現在地点 – 日本マーケットをいかに捉えているか

Leaner COO 田中 (以下田中) : まずは、SAP全体の現状を教えていただけますでしょうか。

SAP 佐藤(以下佐藤) : 現在SAPは、グローバルで昨年の売上は約3兆円を超え、ドイツで最も時価総額の大きな会社となり、多くの企業様に幅広くシステムを導入いただいております。それに伴って、特に支出管理システムである
SAP Aribaでは多くのサプライヤー様との連携も進み、世界約300万社、日本市場でみても約4.5万社と繋がっているマーケットプレイスとなっているのが強みです。

しかし、Aribaシステム上、グローバル全体で300兆円もの取引がなされているものの、日本での流通量は、まだまだ成長余地があります。アメリカ・ヨーロッパなどはもちろん、アジアパシフィックで見てもオーストラリアなどは導入が進み、トランザクションも十分に起きています。世界3位のGDP総額から見ても、相対的に、日本市場はまだまだ白地はあると捉えています。

Leaner 代表取締役 大平(以下大平) : その際にSAPさんが対象としているのは、ビッグエンタープライズと言われる大手企業が中心になりますか。

佐藤: そうですね。 間接費総額が大きく、拠点も世界に広がる大手企業様の方が相対的に大きなペインを抱えている場合があるため、メイン顧客となっています。

大平: 確かにペインの大きさは大手企業様の方が大きいというのはわかります。Leanerではより中堅中小の企業様が中心になりますが、 自社の間接費に関して全体を把握したくてもできていない経営者の方々と多く出会います。

そのような状態は企業規模に関わらず日本全体で起きている状態なのでしょうか。

日本マーケットで、間接費感度が高まらない理由

佐藤: 我々が接している企業様でも、期が締まってみないと、何に・どれくらい使っているのかわからないという状態にあるという声を耳にします。

先日も、自社の製造原価など、直接材に関しての管理・見直しはとても高い水準で行われている一方、間接費に関しては二の次三の次となっていると仰るお客様もいました。

田中: そのような状況はなぜ起きてしまっていると思われますか?

佐藤: 産業構造的に、もともと日本は製造業が強く、経済を牽引してきたと思います。
より価値の高い製品を、効率的に生産する力が高い日本の製造業が、お手本となった結果、製造原価の高い精度での管理やサプライチェーンの見直しはできている。一方で、間接材については相対的に劣後されているというのが、現状なのではないでしょうか。

大平: 我々がお手伝いしている層のお客様ではさらに、直接の担当がいないという場合もあります。総務担当はいても、間接材を含めた購買管理を徹底し、さらには量・質的に適切な状態を保つことをミッションとするポジションがないため、当然着手されていないという状況にも、よく直面します。

佐藤: また一方で、CPO(Chirf Procurement Officer)やCIOなどの明確な役員や担当部署がある場合でも、間接費に積極的に切り込んでいかない場合もあると思っています。海外では他の部門同様、自らのキャリアを考える際にフラグシップとなりえるプロジェクトをリードすることが通常です。間接費領域でいえば、取り組めていない領域があればまさにその領域に踏み込み体制を整備し、抜本的に契約を見直すなど、自らがリードする変革を通じて利益貢献を果たそうとする。変革をリードするというリスクを取ることが、結果的にキャリア上でのリスクヘッジになっている。

そういった感覚・考え方が、日本ではまた浸透していないというのはあるかもしれません。

間接材への意識を高く持てる企業の条件とは

田中: 一方で、間接材管理についても感度高く取り組めている企業様は、規模に関わらずいらっしゃると思います。その違いはどこから生まれているとお考えですか?

佐藤: CEO, CFOなど会社のトップのコスト感度が高いかどうかは、まず大きく影響する点だと思います。それはこれまでの業務経験的なものもありますし、実際に痛い目を見ているかどうかによって変わっている印象です。

これまでちゃんと管理していなかったばかりに、余計なコストを垂れ流していたということや、ガバナンス的に問題が生じたなど理由は様々かと思いますが。

大平: わかります。ですがそれだと、間接費への感度が高まるには一度経営層に強い原体験が必要ということになってしまいます。それではなかなか構造は変わらないと思っているため、
Leanerでは担当者と間接費管理や削減のアクションを行った後、マネジメント層への報告サポートも行おうとしています。

大平 裕介 ■株式会社Leaner Technologies 代表取締役 

A.T.Kearney 株式会社にて、主にコスト改革(Strategic Sourcing・BPR)、事業戦略策定などに従事し、2018年に当時最速でアソシエイトに就任。2019年2月、株式会社Leaner Technologiesを創業し、代表取締役CEOに就任。

佐藤: それはとても大事なことだと思います。もしその取り組みが進めば、経営層だけでなく現場の社員の意識が変わっていきますね。

日本でも感じ始めた潮流の変化

佐藤: それでも最近では、日本でも現場の意識は変わり始めているように思います。

理由の1つめは、企業のグローバル化。

企業のグローバル展開が進むにつれて、社内でのコンプライアンス・ガバナンスに関する話をよく聞くようになりました。国内だけのビジネスと異なり、各国で調達・出荷を行うとなると、管理体制が整っていないと、見えにくい部分で日本では考えられないようなトラブルが起きてしまうということもあります。国によっては、商慣習的にそれが当たり前という場合もあり、手なりで正すことだけでは難しい。そのような状況の中で、しっかりと管理し、引き締めの流れが、間接費の領域でも起きていると思っています。

2つめは、AIやRPAなどを用いた自動化・効率化の流れです。

これまでは、調達や経費処理は紙でなければいけないという状態で、郵便やFAXを使っていました。ですが、書類はどんどん電子化され、デジタル・クラウド上でやりとりが済んでしまう、ということが当たり前になってきます。そのため、単純な作業は全てシステムに任せてしまい、できる限り作業の自動化・効率化を進める。その結果、浮いた時間を、本来行うべき分析業務や、ネゴシエーションのためのツール整備などに充当し、適正な価格・品質の資材を調達することに注力する、というトレンドが当たり前になるでしょう。

総務・購買部門へ光を当てたい – SAP × Leanerの想い

田中: 2つめの点は、Leanerでも意識しているポイントになります。初めは自社の費用の見える化や具体的な契約の見直しなどから価値を提供していきますが、継続的に価値貢献できるよう、より個社に合った形で、支出の管理・分析といった領域でも価値を発揮いただけるよう、サービス・プロダクトの改善をしていきたいと思っています。

大平: それが積み重なることで、現場社員のモチベーションが上がることは大事なことだと考えています。

佐藤: 仲良くしていただいている上場企業の代表の方も同じことを仰っていました。まずは総務・購買担当が付加価値の高い仕事に注力すること、そして経営がその業務に光を当てて、きちんと評価すること。そのために我々も全力でサポートをして、世の中を良い方へ変えていきたいですね。

田中 英地 ■株式会社Leaner Technologies COO (写真左)

A.T.Kearney 株式会社にて、Managerとして、消費財、通信、金融機関、製薬会社、広告代理店などを中心に、新規事業、ビジネスデューデリジェンス、中期経営計画、マーケーティング、BPR、調達改革(間接材/直接材など)、戦略からオペレーションまで幅広いテーマに従事。
2019年5月A.T.Kearneyを退社し、株式会社Leaner Technologiesへ参画。

(次回へ続く)