2022.01.21

VA / VEの意味とその違いとは?取り組みの進め方について解説

VA / VEの意味とその違いとは?取り組みの進め方について解説

皆さんは、「VA」「VE」がそれぞれどのような意味かご存知ですか?

VA / VEは、製造業にとって欠かせない考え方の1つです。新型コロナウイルスの世界的流行に加え、高齢化社会による労働力不足を背景に、企業は生産性を向上し、利益を確保することが喫緊の課題となっています。

本記事では、製造業に役立つVA / VEの意味とその違い、どの場合に取り組むのか、どのように進めるのかについて解説します。

TEXT BY Leaner Magazine編集部

        

VA / VEの意味とその違い

VAは「Value Analysis」の略で、和訳は「価値分析」です。VAとは、製品・資材サービスのコストと機能を研究することにより、既に使用している製品を再度見直し、図面や仕様書の変更、製造方法の能率化、発注先の変更などを行い、品質を維持しつつコストを低減する組織的な活動のことです。必要な機能を最小のコストで得ることを目的とします。

VEは「Value Engineering」の略で、和訳は「価値工学」です。VEとは、製品・資材サービスのコストと機能を研究することにより、図面や仕様書の変更、製造方法の能率化、発注先の変更などを行い、コストを低減する組織的な活動のことです。顧客が求める必要な機能を最小のコストで得ることを目的としています。

参考:トヨタ「原価企画・質量企画・部品標準化」

このように、VA / VEはどちらも必要な機能や品質を備えたまま、製品のコストを低減する方法ですが、VAは「既存製品に対しての提案」VEは「製品の設計段階での提案」という違いがあります。

                

VA / VEの歴史

1947年に米国General Electric社のL.D.マイルズ氏が、製品価値へのコストの寄与度を評価するVA(Value Analysis)を発案しました。当初は製造メーカーの資材部門に導入され、コスト低減の成果の大きさが注目されました。それを米国国防相が1954年に製品の開発、設計段階まで発展させてVE (Value Engineering)と命名しました。翌1955年には日本に導入され、1960年頃から国内製造業各社が導入するようになりました。

その後、企画・開発・設計・製造・物流・事務・サービスへと適用範囲が広がるとともに、あらゆる業種で活用されるようになり、「顧客満足度の高い価値ある新製品の開発」「既存製品の改善」「業務改善」にも導入され、企業体質の強化と収益力の増強に役立っています。

参考:公益社団法人 日本バリュー・エンジニアリング協会

             

VA / VE活動の取り組み例

VA / VE活動は、トヨタ自動車社の取り組みでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、自動車業界のほかにも、さまざまな製造業や、建設業でも取り組まれています。

VA / VE活動は品質向上やコスト削減、効率化などを目的に、以下のような場合に行われます。

        

自動車製造業界での取り組み

自動車製造業において、新製品の開発では、顧客に「より良いクルマを・より安く」提供するために、製品企画の段階から予算を決め、その予算内で新製品を開発していきます。

新型コロナウイルスの世界的影響など、外的要因に利益が左右されないよう、計画した利益を獲得するために「目標原価をどう設定し、どう達成するか」を総合的に企画し、実現します。

参考:トヨタ自動車75年史

            

建設業の工事現場での取り組み

建設業の工事現場では、施工の合理化を図る際にVA / VE活動が行われます。

ここでいう合理化とは、工程を短縮することで工事の原価を抑えつつ、品質向上を実現する取り組みのことです。高齢化による労働力減少が問題となる昨今、建設業界においてもVA / VE活動が行われることは少なくありません。

また、入札不調(※公共工事の落札者が決まらないこと)となった場合もVA / VE活動が行われる傾向があります。

1991年に神戸市において入札不調が増加し、特に大型工事の発注が困難になった状況を踏まえ、VE制度が試行的に採用されました。

これを皮切りに、建設省、東京都がVEの導入を決め、現在では地方自治体レベルでも本格的な導入段階を迎えています。特に、公共工事は設計後の変更が難しいので、設計と入札時、契約後の3段階あるVEのうち、設計前の段階で資材も含めた変更を行うことが望ましいでしょう。

参考:東京都財務局「VEガイドライン」

               

VA / VEの進め方

VA / VEは、以下のステップで進められます。

1. 情報収集

まずは、情報収集を行います。顧客が必要とする機能を明確にしたうえで、どの製品を改善するのか、対象製品を選定し、必要な情報を収集します。

収集すべき情報は、たとえば対象製品にどんな技術が使われているのか、どの程度コストがかかっているのか、顧客からの要望や、どの程度の品質を求めているか、などです。また同時に、競合他社についてや、法的な問題についても情報を集めます。

このステップは、今後VA / VEをスムーズに進めるうえで重要になります。

2. 必要な機能の整理と定義付け

次に、必要な機能の整理と定義付けを行います。

必要な機能とは何なのか、必要な機能の実現はどのように定義されるのかを、ステップ1で収集した情報と照らし合わせながら決定し、製品の設計を行います。

3. コストの調査・分析

3つ目のステップは、コストの調査・分析です。ステップ2で定義付けした機能に対して、現状かかっているコスト・本来あるべきコストを調査・分析します。また、利益目標を決めるために、目標売価と目標原価を設定します。次に、目標原価から逆算し、機能ごとの目標コストを定めます。

目標コストを定めたら、実際に設計通りに製品を作ることができるか、以降のプロセスで検証していきます。

4. 改善提案の作成

コスト分析が終わったら、いよいよ改善案の作成に入り、顧客や発注者に提案・提案依頼を行います。

形状や材料変更によるコスト削減の試みや、製造方法の見直しなど、さまざまな手法を検討していきます。

今まで調査・分析してきた情報を示し、顧客にとっての「必要な機能」を明確にし、これらが保持、もしくは改善された状態になるよう、改善案の候補を絞り込みます。

提案依頼を受けた企業は、提案書式が顧客から指定されることも少なくないため、これに準じた提案書を作成します。この際、改善点やコスト算出の根拠、品質保証などを明確にし、元の計画と比較してどれくらいの変化があるのかを記載するとよいでしょう。図や表を使用することで、顧客に改善点をわかりやすく伝えることも重要です。顧客からの承認を受けて、設計者やプロジェクトマネジメント体制なども確定させます。

提案後は、結果が出るまで顧客のフォローアップを行います。報告書で目標に対する達成状況を数値化し、提案した内容が有効であるのか、作業が予定通りに進んでいるかなどを確認します。その際、資料を添えて数値の有効性を実証するのがポイントです。

5. 全体の振り返り

最後に、一連の流れを振り返り、評価します。

報告書をもとに、顧客や発注者を含む関係者で改善案や作業を評価し、全体の評価も行います。全体の振り返りを行うことで、次回の活動に活かすことができます。

           

おわりに

今回の記事では、VA / VEについてご紹介しました。

記事前半ではVA / VEそれぞれの意味や歴史、違いについて解説しました。そして後半部分では、どのような場合にVA / VEが行われるのか、どのように提案を行うのかを解説しました。

本記事が皆さんのVA / VE活動の実践に役立てば幸いです。

RECOMMEND

こちらの記事も人気です。