2021.11.29

調達DXとは?意味やトレンド、具体的な実践方法について解説

調達DXとは?意味やトレンド、具体的な実践方法について解説

企業においてモノやサービスを調達・購買する活動は、コストや利益を左右する重要な取り組みです。

コロナ禍で多くの企業がコスト削減やDXへの関心を高めていますが、一方で調達のDXを実現している企業は、決して多くありません。

本記事では、「調達DX」の意味やトレンド、プロジェクトの進め方について解説します。

TEXT BY Leaner Magazine編集部

調達DXとは?

「DX」とは、デジタルトランスフォーメーション(英語:Digital Transformation)の略称であり、2018年に経済産業省がまとめた「​デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」で以下のように定義されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

​デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン(経済産業省)

DXの目的は「競争上の優位性を確立すること」であるため、「業務をデジタル化すること」と「DX」は同義ではありません。異なる概念、またはDXのステップの1つだと言えます。

それでは、調達のDXはどのように定義されるのでしょうか。

「調達DX」とは、「調達活動において、データとデジタル技術を活用して業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争優位を生み出すこと」です。

調達DXが達成された状態の具体例として、以下のようなものが考えられます。

・ソーシングの川上(要件検討)から川下(納品・検収)までのプロセスがすべて電子化され、かつERPや経費精算システムと連携しているため、支出に関するすべての情報が一元集約され、戦略的なコストダウン活動を図ることができる

→そのため、他社よりも収益性が高い

・設計から生産まではもちろん、営業・販売を含めた全サプライチェーンの情報が一元集約できており、製品の販売実績から逆算した設計・生産が可能になっている

→そのため、製品力が高く、売上創出力が高い

・現地のニーズに即した製品開発、及びサプライチェーンを確立することでグローバル競争に勝つことを目指し、各国拠点すべてでインフラを構築。各国すべてがグローバル統一の調達システム・オペレーションを用いることで、ベストプラクティスを各拠点が活用することができ、また各国の情報を共有することで、本国側で最適な購買戦略を検討できる状態になっている

→そのため、グローバル競争における収益力を確保できる

・過去の見積情報や、サプライヤーに関する情報、各社との特約契約等がすべて一元集約されており、このデータベースをもとに、サプライヤーや物品のレコメンドがされ、だれでも最適な調達先から最適な条件で購買ができるようになっている

→そのため、他社よりも安価に購買ができ、コストがやすい

        

調達DXのすすめかた

一般的に調達のDXは、以下の5ステップで進められます。

ステップ①:基礎を固める

最初のステップでは、基礎を固めます。

販売・製造・財務などの組織内プロセスをデジタル技術で自動化する段階で、DXというよりは、ビジネスの自動化です。例えば、いくつかのオペレーションやシステムをクラウドに移行し自動化・省人化されたオペレーションを実現します。

業務を一部なくすことにもなるので、現場からの反発をうけることも少なくありません。そのため、経営トップが戦略に対して献身的なリーダーシップを示すことが重要です。目的を明確にし、意義を伝え、アイデアを繰り返し試すことで、問題を取り除いていきます。

デジタル化する業務の対象は、いくつかの階層に分けることができます。顧客接点により近い「フロント」から、」自社の事業運営に欠かすことができない「バック」の基幹業務まで、さまざまなレベル感があります。

① [フロントのデジタル化] デジタルチャネルを導入

② [バック(ノンコア業務)のデジタル化] ノンコア業務にSaaS導入

③ [ミドルのデジタル化] データドリブンな意思決定と自動化

④ [バック(コア業務)のデジタル化] 基幹業務をデジタルスクラッチに置き換える

参考:金融機関や大企業のDXはどうすすめればいいか

基本的に①→④にいくにつれて、デジタル化・移行の難易度は高まっていきます。よって、「フロント」や「バック(ノンコア業務)」のレイヤーから徐々にSaaS導入を進めていくと良いでしょう。

         

ステップ②:個別対応

デジタル化によって基礎を固めたら、今度は個別の領域からDXをめざす段階に入ります。

個々の業務や事業部が破壊的テクノロジーを使用して新しいビジネスを生み出すようになる段階で、データとデジタル技術を活用してどのように競争優位をつくり出していくか、イメージを明確にし、具体化していくプロセスになります。

変革を担当するリーダーに十分な権限を与えること(権限強化)と、デジタルのレバレッジポイントをチームが理解していることが重要です。

例えば調達部門なら「BCPやSDGs対応をしていくためには、取引先情報データベースがリアルタイムで更新・把握できているべきではないか?」「これはどのように実現可能か?」などを検討・実現していきます。

DXのポイントを理解するためには、当該業務領域の専門家であるサービスベンダーと協働しながら、プロジェクトを進めていくことが有効な打ち手となるでしょう。

      

ステップ③:部分連携

ステップ3では、部分的に連携を行います。

この段階では、組織全体が同じ方向に舵を切り始めているものの、デジタル基盤の整備や新しいビジネスモデルへの移行は完了していません。各個別領域のデジタル化にとどまらず、それらをとりまとめる中核組織が、全社を効果的に変革するためのモデルを採用し、変革を推進するために必要なリソースに投資をしていきます。

      

ステップ④:全体連携

ステップ4で、全体が連携し、短期的に変革が実現された状態をめざします。

この段階では、企業全体でデジタルプラットフォームが導入・連携され、新しいビジネスモデルが定着しています。ただし、変革は一度限りの段階で、これを持続するためには企業のIT部門とその他の部門が、テクノロジーの状況を常に把握することが必要です。

ビジネス上の課題を分析し、DXを推進するために必要なテクノロジーを常にリサーチし続けることが求められます。

      

ステップ⑤:DNA化

最後のステップは、組織のすべての人のDNAに変革が浸透し、常に破壊的テクノロジーを使用して新しいビジネスを生み出している状態です。

絶えずイノベーションを起こし、業界トレンドを主導するイノベーターになっている段階で、事業と組織の継続的強化を支える「アジャイルな文化」を根付かせることが重要です。

Netflixは、DNA化までを成功させたDXの典型的事例です。

従来、顧客に物理的なDVDを郵送していたところから、ビジネスモデルとサプライチェーンを見直し、DXを実現することでストリーミングメディアへと移行しました。

現在はコンテンツへと注力し、オリジナルコンテンツの作成、そしてディズニーのような企業に真っ向から価値で挑み、戦っています。これこそが第5段階の定義であるといえるでしょう。

参考:なぜ、DXは失敗するのか?: 「破壊的な変革」を成功に導く5段階モデル

      

調達においては、原価低減、サプライチェーンのリスク軽減などを目的に、契約や見積書の管理、在庫や物流管理等の領域を個別にデジタル化することから始め、やがて調達活動全体が変革された状態をめざします。

これら調達・購買にに関わる活動すべてをDXすることは、一朝一夕にはむずかしいでしょう。スピードは重要ですが、各ステップに基づいて進めれば、複数年をかけて取り組むべきですしかし、実現すれば、組織に大きなメリットをもたらすでしょう。

         

調達DXの重要性

これまで、調達DXの定義や、実現までのステップについて解説してきました。しかし、そもそも調達DXはなぜ重要なのでしょうか。

日本の多くの企業では、調達において「専門組織の不在」や「属人化した調達活動」があるのが現状です。

専門組織がおらず、業務が属人化していると、色々な問題があります。

たとえば、異動や退職で業務が空いてしまうケースです。業務が担当の方によって成り立っているケースでは、その方がやめてしまった場合に同じことをできる方がおらず、それだけで調達コストが高止まりしてしまい、対処する術がない事態に陥るリスクはあるでしょう。

また、現場の調達担当者はメールやFAXといったアナログなやり方で案件を捌くのが精一杯という状況があります。特に製造業における製造原価以外の「間接材」の領域は、調達部門に集約しきれておらず現場現場で発注してしまっていたり、コスト責任を負う担当者が不在であることも少なくありません。

調達DXでは成果が目に見えるようになるため、可視化された成果をもとに1部署から全社に広げやすく、今まで日の目が当たらなかった担当の方々の成果も可視化されるようになります。

自分のやっていることが会社の収益にどう貢献しているのかがわかると、今までよりもより前のめりに調達・購買に取り組めるようになることもあるでしょう。

今までの調達活動で行ってきた工数を大きく削減できることにより、本来集中すべき業務や、他の業務に注力できるという点でも、調達DXは重要です。

          

日本における調達DXのトレンド

事業運営に必要なモノの調達は、あらゆる企業において存在します。その中でも、事業モデル上調達が原価と直結する製造業においては、その影響範囲は製造計画から販売まで多岐にわたります。調達プロセス管理や発注管理、在庫管理や物流管理等、さまざまです。

これら各領域をデジタル化していくためには、大きく3つの方法があります。1つ目はSIerなどの外部業者に依頼し、自社システムを開発すること。2つ目は、外部のシステム(クラウドサービスなど)を導入することです。

それぞれのメリット・デメリットは以下になります。

1. SIerなどの外部業者に自社システム開発を依頼

メリット:自社のニーズに合わせた独自のカスタマイズが可能

デメリット:開発に3-5年かかる、まとまった額の導入費用がかかる、保守・メンテナンス費用がかかる

2. クラウドサービスの導入

メリット:すぐに導入でき、早期の効果が期待できる。まとまった導入費用が不要。

デメリット:メンテナンス等で利用制限がかかる場合がある。有効な使い方を学ぶ必要がある。

※参考

近年では、特にすぐに導入できるクラウドサービスの人気が高まってきています。

本章では主に、安価で始めやすいことが特徴である、クラウドサービスについてご紹介します。

        

国内調達システムの歴史

1973年にSAP社が「R/1」をリリースしたことを皮切りに、1990年代後半から日本でもERPの普及が進んでいきます。その後、デジタルツールは調達活動の各プロセス単位で発展していきます。

ここでは、各領域における1990年代後半から現代に至るまでのサービスを紹介します。

【在庫管理領域】

1991 アラジンオフィス

2000 楽楽販売

2019 ロジクラ

【物流管理領域】

2001 Oracle Field Service

2014 ONEsLOGI Cloud/WMS

2020 LINK Biz mobility

【購買管理領域】

1998 楽々ProcurementⅡ

2008 ソロエル

2012 SAP Ariba

     

購買管理領域は、厳密には「Sourcing(商品選択)」、「Order(発注)」、「Payment(決済)」の3つの領域に細分化できます。なかでも、近年では欧米でCoupaGEPFreshBooksなど、SaaS(Software as a Service)でSourcingのプロセスに焦点を当てたツールが急成長しています。

日本国内においては、Leanerをはじめとしたスタートアップ企業が、Sourcing領域を中心としたソリューションを提供しています。

Leanerのように、各プロセスの業務をデジタル化するためのサービスが、徐々に増えてきているのが現状です。これらを活用することで、デジタル化を実現することは、調達DXを実現するための最初の一歩として有効でしょう。

     

最後に

本記事では調達DXの意味と進め方、そしてツールの歴史とトレンドを紹介しました。

多くの企業が、各プロセスにおいてメールやFAX・紙などを使用しているのが実状です。競争優位を確立し、これからの時代で勝ち残っていくためには、アナログな方法では限界があるでしょう。

ぜひこの記事を機会に、自社の調達業務の見直しや改善などに役立てていただけたら幸いです。

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