2021.03.25

DX・デジタルトランスフォーメーションとは?意味や課題、デジタライゼーションとの違い、DXの成功事例を解説

DX・デジタルトランスフォーメーションとは?意味や課題、デジタライゼーションとの違い、DXの成功事例を解説

DX(デジタルトランスフォーメーション)を企業の経営戦略になぜ組み込むのか、デジタライゼーションとの違いは何なのか、どのようなメリットがあるのか。

今回の記事では、デジタルトランスフォーメーションの意味や由来、具体的な企業の取り組み事例からDX戦略を立案する際の課題・ボトルネックについて紹介します。

TEXT BY Leaner Magazine編集部

   

1. DX・デジタルトランスフォーメーションの意味や由来

「DX」とは、デジタルトランスフォーメーション(英語:Digital Transformation)の略称です。「DX」の「D」はDigitalの頭文字を意味します。また、「Transformation」の接頭辞「Trans」はXと略式表記されることが多いため、「Digital Transformation」は「DX」と表記されるようになりました。

近年、広く使われるようになった「DX」という言葉の起源は、2004年に遡ります。当時スウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授がその概念を提唱したとされています。その際に提唱された概念は「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」というものでした。これを企業経営の文脈にあてはめた場合、「デジタル技術を通じて収益構造顧客体験企業文化を大きく変革すること」を意味します。

また、DX(デジタルトランスフォーメーション)と同時に押さえておくべき用語がデジタライゼーション(英語:Digitalization)です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)はデジタル技術を活用して変革を起こすのに対し、デジタライゼーションはデジタル技術を活用して業務プロセス・サービスを改善することを主に指します。

但し、この2つの概念を明確に切り分けることはできません。むしろデジタライゼーションには、業務効率化のようなスモールチェンジから、DXに繋がるような大規模な変革までが幅広く含まれるという認識の方が正しいでしょう。

そしてデジタライゼーションと収益構造の転換が同時に達成され、それによって企業文化や顧客体験、競争市場での優位性が大きく変化した時、企業はDXに成功したと言えるでしょう。

次の章では、企業の取り組み事例に基づき、DX(デジタルトランスフォーメーション)によって企業がどのようなメリットを得られるのか解説します。

    

2. DXのメリット・企業の取組事例について

企業がDXを達成することで、大きく分けて「企業(自社)」・「顧客」・「社会」の3つのステークホルダーがそれぞれメリットを享受します。

  1. 企業(自社)
    収益構造や企業文化の改善や変革
  2. 顧客
    顧客体験・サービスの質的向上
  3. 社会
    環境保全や社会問題の解決

これらのメリットの具体的な内容は、それぞれの企業のDX戦略次第で変わります。今回の記事では、具体的なメリットの内容を、経済産業省と東京証券取引所が選定した「DX銘柄2020」に選ばれている企業の取り組み例を紹介しながら解説します。

株式会社小松製作所(以下、コマツとする)の事例を紹介します。コマツは、DX銘柄グランプリを獲得しており、日本国内各所からDXの成功事例として注目される存在です。

コマツの取り組みの中で、特に際立っているのは「コムトラックス」というサービスです。このサービスは、IoT技術を活用して、工場内や離れた拠点の機械を一括管理し、インターネット上で稼働状況を閲覧できるようにしたものです。

コマツの建機は、世界中の様々な建設現場で活躍しており、これらの世界中の稼働データを把握することができます。このように、IoT技術によって稼働状況の一括把握が可能になったことにより、「企業」・「顧客」・「社会」の各ステークホルダーはそれぞれ以下のようなメリットを享受します。

  1. 企業
    盗難防止・機械故障等のリスク管理を大幅に改善し、事業コストを軽減できます。
  2. 顧客
    最適なタイミングで部品交換を提案することで、顧客である建設会社が作業現場のリードタイム・歩留まり問題をある程度回避することができるようになります。
  3. 社会
    燃費消費量などを適切にモニタリングし、顧客やパートナー企業とデータ共有することでESG指標を意識した取引先企業の取り組みを促進することができます。結果として、脱炭素など国際社会全体の問題解決を後押しできます。

また、コマツの取り組みが秀逸な点は、ITソリューションの質もさることながら、これらの取り組みが企業理念と強く結びついている点です。

コマツは企業理念として“顧客、代理店、パートナー、地域社会、コマツの現場を「ダントツ」でつなぐことで、全体最適の経営を実現する”ことを掲げています。この理念で掲げられた目標が、まさにDXの成果として表れており、高い一貫性を持っていることがわかります。

更に、コマツでのDXの成功には「経営陣のコミットメントが大きいこと」・「明確なビジョンがDX戦略に反映されたこと」が大きく関わっていると言えます。

実際、一部企業ではDXすることが目的化してしまったことで課題や企業理念が曖昧に扱われ、DXプロジェクトが頓挫してしまうことがあります。後のDXのためのアクションプランを紹介する章で詳細を説明しますが、こうした事態を回避するためには、「経営陣による強いコミットメント」が欠かせません。

    

3. 市場の動向~コロナ禍での企業のDX~

直近で、DX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されている理由として、新型コロナの影響も多分にあると言えるでしょう。

特にコロナ禍の潮流として、非接触型のデジタルサービスを通じたDXの推進が多く見受けられます。

マッキンゼーのレポートによれば、2020年に新型コロナが日本国内で流行し始めてから、外食産業やエンターテインメント業界において、非接触型デジタルサービスの利用割合が10%以上増加していました。

こうした取り組みは、リモートワークやステイホームの中で、売上が落ち込んでいる飲食・エンターテインメント産業等の収益改善に大いに役立っています。また、在宅中の顧客に対しても新たな価値提供を提供している点でも、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」というDX本来の概念に沿っていると言えます。

但し、マッキンゼーの報告では、日本全体でDXに向けた取り組みを行う企業は10%未満の増加にとどまってることも指摘されています。

実際、外的圧力が強かった飲食・エンターテインメント産業等では、DXに向けた取り組みをせざるを得ない状況から開始されましたが、まだまだ企業ではDXに取り組むにあたり、経営上の課題やボトルネックを抱えていると言えます。

次の章では、その「DXに取り組むにあたって日本企業が抱える課題・解決のためのアクションプラン」を紹介します。

    

4. DXに取り組む日本企業の課題・解決のためのアクションプラン

   

a. 課題:DX戦略の一貫性の欠如・事業部門の足並みがそろわない

現状として、日本企業では「デジタル化」が目的化するあまり、事業部門ごとの予算次第でITシステムの導入状況が異なっていることが多々あります。

そしてDXプロジェクト推進を担当している部署を設置していたとしても、四半期や年間の収益向上に結びつきにくい施策等は、なかなか社内理解を得られないなど課題が残っています。また、会社もよっては昔から利用されているERPの乗り換えのためのチームのみが設置されているケースもあります。

結果として、部署ごとに利用するソフトウェア等が乱立してしまっていることも、まだまだ事例として少なくありません。特に売上に直接結びつきにくいバックオフィスはDXが遅れており、大きな経営課題となっています。

    

アクションプラン:経営陣のコミットメント強化

DXを成功させるには、全社的な視点から策定された「DX戦略」が大事になります。そして、このDX戦略の策定過程では、経営陣のコミットメントを通じて、会社理念や中長期計画と結びついたDX戦略を作ることが大事です。

なぜならDXは、単にIT技術を業務プロセス・サービスを改善する取り組みではないからです。例えば、紙媒体による決裁・書類整理を電子化してペーパーレス化を進めるだけではデジタル化であってもDXにはなりえません。

ここでは、ペーパーレス化はあくまでもDXに向けた具体的な取り組みの1つだという認識が大切です。そうした認識に立った上で、より全社的なデジタル技術の導入による「クラウド化」「IoTの活用」「データ連携」「機械学習」等によって、

  1. 1.会社の労働環境や意思決定プロセスをどのように改善するのか
  2. 2.顧客対応やサービス提供のあり方をどのようにモデルチェンジするのか
  3. 3.社会に対してESGの観点からどのようなソーシャルインパクトを創出したいのか

までを考え抜き、実行に移すことでDXを達成できると言えるでしょう。

また「DXを達成するために、とにかくクラウド・IoT・AIを導入すれば良い」という考え方はお勧めできません。これらデジタル技術は、あくまで課題に対するソリューションでしかないからです。

ソリューションありきでDX戦略を立てた場合は、「手段が目的化」してしまいます。そのような状況だと、プロジェクトが途中で頓挫してしまった際に、方向修正したくても、そもそもプロジェクトの目的が何だったのかわからなくなります。

従って、経営陣主導で解決課題や企業理念を再検討し、「どんな課題があるのか」「なぜその課題を解決したいのか」「どのように取り組むことがベストなのか」といった5W1Hを明らかにしながら戦略を立てることが肝要です。

DXのような全社的な取り組みが必要な施策では、トップマネジメントの長期的視点からDX戦略の策定を始め、それを事業部門ごとのKPIにブレイクダウン(構造分解)して、具体的な施策を打ち出すことが重要です。

   

b. 課題:デジタル人材の不足・流動性の欠如

先ほどの文章では、経営陣のコミットメントの重要性について述べました。しかし、経営陣が仮にコミットメントを発揮してDX戦略を立案しても、それらDX戦略を実行に移す過程で大きなボトルネックが存在してしまっていることも事実です。

そのボトルネックが「社内のデジタル人材」の不足です。DX戦略を推し進めるためには、テクノロジー、データといった各種施策において高い実行能力を持つ社内人材が必要不可欠です。

また、DX戦略をコンサルティング会社等にアウトソーシングしたとしても、社内のIT化が整った後に、それらのシステムを活用して価値を生み出せるかどうかは社内人材の実行能力次第であり、結局社内のデジタル人材が大事になります。

   

アクションプラン:ITリテラシーの強化とIT業務の段階的な内製化

このデジタル人材の育成で大事なのが、ITリテラシーの強化とIT業務の段階的な内製化です。経営陣のコミットメントを確保すると同時に、DXを進められる人材を内部で育成し、ITやデータに対するリテラシーが高く、DXにともなう社内変革に対する抵抗感がすくない社員層を増やしていくことが大切です。

DXに成功している会社の特徴としては、社員のITリテラシーを高めつつ、IT業務の内製化をスモールスタートし、戦略的に取り組みを拡大しているケースです。また、それら取り組みの一環として導入されるのがSaaSサービスです。

近年、日本国内ではクラウド技術をベースとしたSaaS系サービスが増え、社内の様々な業務に関わるデータ連携や業務プロセスの改善を支援するITツールが出てきています。

これらSaaSサービスの魅力は、IT業務の内製化を促進し、社内人材のデジタル戦略の実行能力を高められる点です。以下の文章では、SaaSを含めたITサービス等が各業務のDXをどのように推進できるのかを紹介させて頂きます。

   

業務ごとのDXを実現するソリューション

   

営業支援:Salesforce

営業活動をDXすることは、現場の業務を効率化するだけでなく、会社のガバナンス機能を強化し、新たらビジネスチャンスを取りこぼさないなど、多くのメリットをもたらしてくれます。

例えば、営業日報はナレッジのかたまりであり、それらデータを集約することで、ビジネス部門の現状を把握し、自社の営業活動における長所・短所を分析し、商機を見極めることができます。

しかし、これら日報や営業資料の管理が事業部門ごとや個人ごとに異なるフォーマット・手順で入力・管理されていることは意外と多いです。これでは、データを統合して一元管理することは大変難しくなります。

そうした中で、Salesforce等のBIを活用することで、営業活動の可視化を促進するだけでなく、業務報告や部署間コミュニケーションにかかる営業部隊の心理的なストレスを緩和することにも役立ちます。営業支援ツールは、利益改善を目的として導入されることが多いですが、こうしたソフト面でのケアが行く届くことで風通しがよくなり、ビジネス・社内風土の革新につなげていくことが望めます。

   

見積り・調達業務:Leaner

サプライチェーン管理や見積もり・調達業務をDXしたい企業があるとします。企業のDX戦略として、見積もり・調達業務をデジタル上で管理し、コスト最適化を図ることを目指します。また、顧客や関連するサプライチェーンに対しては、調達内容の透明化・グリーン調達の促進等を図ることで、ESG経営の促進も目指します。

しかし、こうした企業に散見される問題として、「部署別に支出管理にバラツキがあって可視化できていない」「事業部ごとに調達が独立してしまっていて、横ぐしの集約機能が働いていない」などオペレーション体制に課題があることが少なくありません。

そうした状況下で、利用が増えているのがSaaSの一例がクラウド支出管理ツールのLeanerです。このサービスは、各部門の支出データを連携して管理することを可能にしてくれます。

これによって、それぞれの部門で独立して保管していたデータを集約することで、部門ごとのデータ管理に関するリテラシーを高めることができます。こうした横ぐしの集約機能が社内で働くことで、財務管理を通じたガバナンス強化・コスト抑制が働きます。

   

サプライチェーン・マネジメント:Shippio、ハコベル

サプライチェーン・マネジメント(SCM)は、いち早くDXが進んでいる分野だと言えます。

かつて、「コンテナ」の発明は様々な荷物の規格の標準化に貢献し、世界中のどの港湾にいても、同じような設備を備えておけば、どの国から運ばれて来た荷物にも対応できるようになりました。これによって、海運を始めとしたロジスティクスは大きく進化したと言えます。

現在のロジスティクスは、ITサービスを活用したSCMによってさらなる進化を遂げようとしています。例えば、オラクルやマイクロソフトが提供しているインテリジェントSCMでは、購買データから消費動向を予測し、必要な調達量を適宜コントロールしながら、自社の物流を管理できるようになっています。

また、SCMの中でも貿易業務のDXに注力したShippioでは、見積り・契約書・本船動静のデータなどを同一プラットフォーム上に集約してくれます。これによって、煩雑な貿易業務がもたらすオペレーティングコストを著しく削減し、社外のステークホルダーを含めたサプライチェーンの透明性の向上にも貢献してくれます。

さらにスタートアップの中でもサプライチェーン・マネジメントの改善に寄与する目的で登場しているのが、ラクスル株式会社の「ハコベル」です。ハコベルでは、P2Pの物流シェアリングプラットフォームの提供が目指されています。

現在の日本のロジスティクス業界は、専業ドライバーが個々の企業に属しているゆえに、企業ごとの案件しか処理できず、積載率や回転率、実車率は頭打ちになっています。ハコベルは、IT技術を駆使して、フリードライバーと企業を直接結びつけ、実車率の著しい向上を目指していると言えます。

   

間接業務・バックオフィス:クラウドサイン、コンカー

バックオフィスや間接業務は、フロント側に比べると著しくDXが遅れている領域だと言えます。企業によっては、売上に直結する部門にばかり意識が向きすぎてしまう傾向があることは否めません。

しかし近年、経営管理の無駄をそぎ落として、より筋肉質で持続可能な経営体制づくりをする取り組みが各企業で始まっています。そうした中、間接業務やバックオフィスにフォーカスしながら、それら業務のDX化をサポートしようとしているのが、クラウドサインコンカーなどのSaaSサービスです。

例えば、クラウドサインは契約業務の電子化をサポートするための電子契約サービスであり、経験豊富な弁護士らの監修のもと、低価格で利用しやすい電子契約プラットフォームを提供しています。これらプラットフォームを活用することで、業務コストを削減できるだけでなく、契約内容・履歴のトレーサビリティを高めることでコンプライアンス強化なども繋げられます。

また、コンカーは経費精算業務をデジタル化してくれるプラットフォームであり、近年大企業をはじめ利用者が増えているサービスです。架空発注や経費の水増しなど、コーポレート・ガバナンス上の問題に悩まされている企業は少なくありません。

そのため、コンカーを始めとしたバックオフィスツールの利用は、業務スピードの向上だけでなく、コーポレート・ガバナンス上のリスクを回避し、企業のブランド価値を維持するためにも重要になりつつあると言えます。

   

終わりに

いかがでしたでしょうか。

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、その定義部分から十分に理解が進んでおらず、それゆえに企業としてどのように取り組めば良いのか不明確な事例も多いです。

本記事を通じて、DXのメリットや戦略立案のポイント・ボトルネックの解消方法を理解頂き、DXを推進して頂けたら幸いです。

RECOMMEND

こちらの記事も人気です。