2021.03.03

予実管理とは?基本や目的、重要なポイント、コスト削減のアイデアまでわかりやすく紹介!

予実管理とは?基本や目的、重要なポイント、コスト削減のアイデアまでわかりやすく紹介!

あなたは予実管理の重要性をご存じですか?

どのような会社でも経営目標を策定し、その実現に向かって事業活動を行っています。予実管理を活用することで、経営目標の進捗が簡単に把握でき、計画達成のために必要な打ち手を迅速に実行できます。

一方で、予実管理がただ「予算」と「実績」の差分を集計しているだけになっている企業も少なくありません。この記事では、予実管理をうまく活用し、しっかりと利益を出しながら事業成長を続けるためのやり方について、解説いたします。

TEXT BY Shohei Yamashita

   

予実管理とは?

   

予実管理の基本と目的

予実管理とはその言葉の通り、企業活動における「予算」と「実績」を管理することです。また、予実管理と一口で言っても、売上コストで、それぞれ意味合いが異なります。

この記事では「売上」の予実管理、「コスト」の予実管理の2つの観点で解説を行い、特に「コスト」の予実管理の重要性について解説しています。

そもそも、なぜ企業は「予算」を策定する必要があるのでしょうか?

営利企業であれば、どんな企業も「顧客に価値を届けることで事業を伸ばし、会社を成長させること」を目的として企業活動を行っています。

ビジョンやミッションなど会社のありたい姿を定量的に表したのが「経営目標」です。経営目標に基づいた予算を策定することで、「現時点での事業進捗がうまくいっているのか、そうでないのか」を予算に対する実績という観点で評価することができます。

これにより、事業進捗がうまくいっていない場合は適切な打ち手を実行し、予算配分を変えるなど改善のアクションを行うことが可能になります。

予実管理の目的は、経営目標の達成を迅速に実現することにあります。

また、大前提として企業活動は利益を確保し、その利益を再投資しながら事業を拡大していくことが必要です。

そのため、売上が100億円あっても、その売上を作るためのコストも100億円かかっていたら本末転倒であり、予実管理や予算策定は「いくらの利益を出すか」を起点に考える必要があります。

   

予実管理の手順①:予算策定に着手する

予算を策定する際は、経営目標からバックキャスト(逆算)した数値目標を設定します。上場企業では、中期経営計画という形で5年単位や3年単位の予算計画を作ることが多いですね。

年次の予算を策定したら、月次、場合によっては週次、日次などの時間軸に沿って、細かく予算を切っていきます。

利益を起点に予算を作り、毎年かかる費用である人件費や減価償却費、販管費などを予算化し各部門に割り振っていきます。その後、営業部やマーケティング部など売上に関わる部署で売上予算を策定し、利益目標に到達できるような予算を組んでいきます。

   

予算策定における注意点

予算は細かく設定したほうが課題の発見はしやすいですが、あくまで予実管理の運用が可能な粒度で予算を設定することが重要です。

例えば勘定科目の補助科目程度の費目まで細かく予算を策定することはできますが、実績集計に膨大な時間がかかるのであれば、ある程度粗い粒度にとどめておく、ということも考えられます。

また、期初に設定する予算は絶対的なものではなく、期中で変更・修正されることもあります。

例えば、

・想定外に売上が伸びたので、より人員の拡大を行って更なる売上拡大を目指す

・突然の不景気のためにコストを削る必要が出てきたので予算を見直す

といったことは良く起こります。

従って、予算を策定することも大事ですが、予実管理の進捗に応じて柔軟に修正を行い、改善活動を行うことも同じくらい重要です。

   

予実管理の手順②:実績管理を行う

予算を策定したら、次は実績を集計し管理します。必要な頻度で実績を集計し、予算に対する進捗を把握します。

紙やエクセルで実績集計を行う企業も多いかと思いますが、「集計作業」自体は付加価値のない工程なので、できればシステムを導入して自動で集計されている状態が望ましいでしょう。

例えばSFAやERPを導入して実績集計を自動化し、BIツールで可視化して現状把握を簡単に行えるようにしておくと、課題発見→改善アクションへのリードタイムが短くなります。

実績管理に取り組む上で重要なのは、「予算に対する差分を把握する」だけではなく「予算に対して未達の部分があった場合に、その原因は何かを究明し、素早く対策を講じること」です。

   

予実管理の手順③:予実のズレを分析し、改善策を実行する

これまで、予算策定と実績管理について紹介してきましたが、予実管理を「予算と実績の差分を集計する」だけで終わらせては意味がありません。最終的には、予実のズレがなぜ起こったのかを分析し、迅速に改善策を実行することが求められます。

具体的なノウハウについては第2章以降で詳しく説明いたしますが、例えば売上が未達の場合は自社の収益構造を分解し、どのKPIに問題があるのかを迅速に発見する必要があります。

逆にコスト側で実績が予算をオーバーしてしまった際は、要因は何かを特定し、コスト改善策を実行していく必要があります。

特に、経営目標を達成するためには、以下のようなポイントに気を配りながら、迅速なアクションを心掛けることが重要です。

・なぜ予実のズレが発生したのか
・有効な改善策は何か
・誰が主導して改善策を進めていくのか

この際、経営企画部や経理部など予算を作っている部署だけで改善策を実行するのではなく、売上側であれば営業部やマーケティング部など売上の責任を持つ部署、コスト側であればコーポレート部門やコストを多く使っている部門と一緒にプロジェクトを進めていく必要があります。

実際、予実のズレが発生する原因を最もよく理解しているのは現場部署なので、予算を策定した部署だけで解決しようとせず、現場部署を巻き込んで迅速な打ち手を講じましょう。

   

売上の予実管理を行う際に重要なポイント

   

収益構造を分解する

ほとんどの企業では毎月の売上は〇億円、といった形で予算を作られていると思いますが、それだけでは課題の発見が難しいでしょう。

重要なのは自社のビジネスモデルの収益構造を主要なKPIに分解し、KPIごとの達成率を確認することです。

例えばBtoB向けサービスを提供しており、営業が売るタイプの商材を扱う企業では、以下のような形で売上を分解します。

例:売上金額=見込み顧客数×有効商談化率×受注率×平均顧客単価

各KPIごとに目標値を設定し、その進捗を見ていくことで予算の達成度が見込めるようになります。

収益構造はビジネスモデルによって異なるので、まずは自社の収益構造とKPIを把握しましょう。

   

問題特定が容易にできるシステムを導入する

収益構造の分解ができたら、予実管理を効率よく行うために適切なITシステムの導入を検討します。予実管理は、紙やエクセル、スプレッドシートへの入力という形でも行えます。しかし、これらの手法は、集計作業に膨大な時間がかかるため、迅速な対策を実行することができません。

先ほど例に出したBtoB企業であれば、SFA(営業支援システム)を導入することで各KPIを自動で集計しダッシュボードに表示することができます。

また企業によっては、部署ごとに様々なシステムが散在しており、実績集計が難しいところもあります。この場合は、1つのスプレッドシートに部署ごとのデータをまとめたり、BIツールなどを導入しデータの可視化を行う形がおすすめです。

こうした取り組みにおいて気を付けるべきポイントは、以下の2点となります。

・実績集計作業自体に工数をかけないこと
・売上に関わるKPIを一か所で網羅的に確認できる状態を作ること

   

課題を発見し、現場部署とともに解決を図る

売上は基本的に所管している部署ごとに細かく予実管理が行われているはずです。
全社的な立場で予実管理を行う場合、部署を跨いだ視点で予実の進捗を確認しましょう。

・どの部署の予実の進捗が悪いのか
・それは部署単独で解決できるものか
・解決できない場合、より収益を上げられそうな部署はどこか

など、会社全体の予実を合わせるために様々なことを検討し、速やかに実行する必要があります。

特に、予算策定を主導する経営企画や経理部では、現場の営業部の細かい内情は把握していないことが多いので、現場部署とともに解決を図る姿勢が重要です。

基本的には、経営企画や経理部が収益構造を分解してKPIを設定し、それらKPIの改善・達成を目指して各部署が主体的にアクションを取ることになります。

しかし、中には外的要因でどうしても厳しい場合もあります。例えば、ガソリン車とEV車を売ってる自動車メーカーが、排気ガスの規制でEVを売ることに注力せざるを得なくなるような状況も発生し得ます。

その際には、より収益性の高い他部署への投資を増やすために予算を付け替える、といったことを経営判断で行う必要があります。

   

コストの予実管理で重要なポイント

失われた30年と言われるほど長い不景気が続き、2020年からは新型感染症の流行など厳しい状況が続く日本経済。人口減少社会に突入し、売上アップを目指すのが難しい経済環境では、よりコストを抑制し利益率の高い筋肉質な経営を行う必要があります。

そのために欠かせないのはコストの予実管理を売上の予実管理と同じ粒度で徹底することです。

日本国内では、まだまだ売上至上主義な会社も多いですが、営業利益率5%の会社であれば、”売上を1億円作ること”と、”コストを500万円減らすこと”は利益創出インパクトで言えば同じです。

今後はよりコストの予実管理の重要性が増していくでしょう。以下、コストの予実管理を行うための具体的なプロセスについて解説します。

   

細かく予算を設定し、支出の管理権限を明確化する

コストの予実管理は、売上と同じくコスト構造を細分化していくことで、課題発見スピードが早まります。

ただし、コスト側は売上と異なり、突発的に年1回だけ発生するコスト、定常的に毎年発生するコスト、人員数の変動によって金額が変わるコスト、と様々なものがあります。そのため、「誰が」、「何に」、「いくら」、「誰に対して」支出をしているのかを把握することが重要です。

予算策定の段階では、勘定科目×部署×サプライヤー程度の粒度まで細かく見える化することがお勧めです。企業によっては、勘定科目をより細かい用途別に分けて予実管理を行っている企業もあります。

また、コストを減らすための権限・決裁権の所在を明確にすることも重要です。

米国ではCFO(最高財務責任者)やCPO(最高調達責任者)といったポジションがコスト抑制のミッションも持っていることが一般的ですが、日本ではその権限が曖昧になっている企業が非常に多いです。

これでは、営業部に携帯電話の通信費の予算を持たせているのに、実際にサプライヤーの切り替えや調達活動を担うのは情報システム部であり、営業部にはサプライヤーを切り替える権限がない、といった事態が発生してしまいます。

   

コスト削減における注意点

コスト削減には基本的に以下の2つの方法があります。

①調達コストを下げるためにサプライヤーの切り替えを行う
②社内での利用量を抑制してコストの絶対額を減らしていく

コスト削減の詳しい方法については別記事を参照していただきたいですが、各事業部に予算を持たせて予実管理を行っていく場合、「コストを減らすために必要な権限:代表例は発注先のサプライヤーを切り替える権限など」も同時に渡す必要があります。

これがないと予算は持っているのに、削減のためのアクションができない、といったジレンマに陥り、予実管理のメリットが失われてしまいます。従って、コストの予実管理を行う際は予算と権限をセットにして委譲することが重要です。

   

コストを減らすことをポジティブに捉える企業文化を作る

コストの予実管理を行う中で、予算を実績がオーバーしてしまいそうなときにはコスト削減のアクションを行います。ここで重要なのは、コストを減らす活動に対してポジティブに捉える文化を醸成することです。

時として、日本企業ではコスト削減に成功したとしても、

「なぜそんなにコストが下がったんだ!もともと無駄が多かったんじゃないのか?」

と、ネガティブなフィードバックを受けることがあります。

コスト削減は利益創出に直結する活動なので、本来は売上を作ることと同じレベルで賞賛されるべき活動です。売上の目標達成した人を表彰するのなら、コスト削減に成功した人も同じように表彰して然るべきです。

コスト削減のための活動が適正に評価されないようでは、誰もがコスト削減活動自体を行わなくなってしまいます。そうなると、「コストを減らす」のではなく、「予算を守る」というベクトルになってしまいます。

それでは、予実のズレが生じたときに「減らせるコストは他にないか考える」のではなく、「このコストは○○と××な理由があって減らせないです」といった理由作りに重きをおいてしまうでしょう。

こうした事態を回避するためには、コストの予実管理を行う際にコスト削減活動をポジティブに捉え、適正に評価できるような文化や体制を構築することです。

そのためには、予実管理を行っていくうえでコスト削減額についても定量的に集計し、全社に周知して評価するなど、草の根的な活動が必要になります。

たとえ数万円、数十万円といった小さなコストであっても、利益換算すると売上でいくら必要かを計算し、削減に成功した暁には必ずポジティブなフィードバックを行うことで、コストの予実管理を成功に導くことができます。

   

毎年ゼロベースで予算策定を行い、無駄を抑制する

次に、コストの予実管理を達成するためには、どのように予算策定を行えば良いのかを解説します。

コスト側の予算を策定する際、とりあえず前年の実績ベースで予算策定を行っている企業も多いでしょう。しかし、コストには様々な種類があり、「毎年同じように発生するコスト」は実はそれほど多くありません。

また、技術革新や法規制の緩和により、新たなサプライヤーが出現し価格崩壊が起きるような分野もあります。電力自由化に伴う新電力会社の増加や、従来の携帯キャリアに対するMVNO事業者、オンプレミスのシステムに対するクラウドサービス(SaaS)の普及などが分かりやすいでしょう。

予実管理を行う前手の予算策定の段階で、前年実績ベースの積上げで予算を作るのではなく、ゼロベースで必要な予算を組むことが必要になります。この工程をZBB(Zero Based Budgeting)と言い、実際に数百億円規模でコスト改革に成功した企業もあります。

ZBBについては、詳しくは以下の記事をご参照ください。

世界で話題のコスト削減方法、”ZBB”。その全貌と破壊力に迫る | Leaner Magazine|リーナーマガジン

毎年ゼロベースで組んだ予算に対して予実管理を行うことで、コストを大きく抑制することができます。予算策定の際に、この予算は本当に必要なのか、代替手段はないのか、使用量を減らせないのか、など予算を使用している部署と細かくすり合わせを行いましょう。

   

調達プロセスを見直し、「入口」でコストを抑制する

企業のコストは人件費以外、ほぼすべてが「モノやサービスを買う」ことにより発生します。そのため、毎回の調達活動で最もコストパフォーマンスの良いものを購入できていれば、コストを常時抑制した状態が作ることができ、予実管理においてもズレが起こりづらいでしょう。

コストの予実管理を行う上では、「調達プロセス」を見直すことが非常に重要となります。

調達プロセスを見直す際には、以下のように様々な方法があります。

・毎回複数社(5社以上が望ましい)での相見積もりを徹底し、サプライヤーの 競争環境を醸成する
・調達しているサプライヤーを集約し、ボリュームディスカウントを効かせる
・サプライヤーと価格交渉を行い、安価な調達価格を獲得する
・見積が発生しないカタログ品は、1つのプラットフォーム上で購入する

これらを徹底するためには「社内ルールを変える」といったことだけでは不十分であり、支出管理ツールや、間接材購買プラットフォームなどのシステムを導入することが一般的です。

これら支出管理ツールとしては、LeanerやCoupa、間接材購買プラットフォームとしてはモノタロウやAmazon Businessなどが有名です。

コスト抑制のためにも、様々なツールを導入し調達プロセス全体をDXしていくことが重要です。

   

最後に:予実管理で経営目標を達成しよう

いかがでしたでしょうか?

この記事では予実管理の基本と目的から、「売上」「コスト」両面の予実管理で重要なポイントを解説してきました。

予実管理は「予算と実績の差分を集計すること」が目的ではなく、「経営目標達成のために課題を発見し、迅速に必要な改善策を実行すること」が本来の目的です。予実管理をうまく活用し、しっかりと利益を確保することで、貴社の経営目標の達成に繋げることができます。

この記事が、皆様の企業活動に役立つものであれば幸いです。

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