病院経営に欠かせないコスト削減アイデアを紹介。医療の質を下げずに赤字経営から脱却するには?

コロナの影響で、より一層厳しくなりつつある病院経営。

しかし、病院でコストを下げるとなると気になるのは、医療の質が下がってしまわないかということ。これらに留意した上でコスト削減を実現するには、どのようなことに気をつけるべきなのでしょうか。

本記事では、病院でかかるコストをかんたんに解説し、どのコストを・どのようにして削減すればよいのか、ポイントとともに紹介します。

TEXT BY Leaner Magazine編集部

病院におけるコストの特徴

病院でかかるコストの種類

病院でかかる主なコストには、薬品などの医薬品費の他に、レントゲンフィルムやガーゼなど1回ごとに消費するものにかかる診療材料費、注射針や体温計、聴診器などの医療消耗機器備品費などがあります。

他にも、様々な業務に従事する人の人件費賃料設備管理費などが挙げられます。

 

病院のコスト削減における留意点

病院におけるコスト削減で最も避けなければならないことは、コストを下げることによって医療の質が過度に下がってしまうことです。病院にとって、適切な医療を施すことは人の生死に関わるケースもあるため、最重要事項です。医療の質をできるだけ下げずに取り組めるコスト削減方法を検討する必要があるでしょう。

したがって、医療の質に直結する薬品類や医療機器などは聖域化されており、コスト削減に踏み込みづらい領域と言えます。

また、病院ごとに製薬会社や医療機器のサプライヤーとの関係が既に確立されているケースが多く、現状の取引体制を変更することはハードルが高いと言えます。このように、薬品や医療機器などはコスト削減対象として適切でない場合が少なくありません。

病院においてコスト削減をするには、これらの品目以外に注目する必要があります。

 

病院でコスト削減に取り組むべき費目

1.医療材料費

医療材料費とは、診療に用いる消耗品や備品などです。

医療材料費の削減方法は、主に2つあります。

まず、仕入先が分散していないか確認しましょう。一度に仕入れる量が多ければ多いほど、割引が効くことが多く、単価の低減が見込めます。

「サプライヤーが分散しているときは、サプライヤーを統一する」「調達時期が分散しているなら、なるべく1つにまとめる」などの工夫をすることで、一度に調達する量を増やすことができます。

2つ目に、備品のロスを減らすことが挙げられます。在庫管理によって可視化された既存の調達量と、本来必要な備品の量を比較することにより、むだがないかどうかを確認できます。廃棄が多くなっている備品を特定し、それらの仕入れを時期ごとに適切な量に調整することで、コスト削減に繋げることができるでしょう。

 

2.人件費

人件費の見直しといえば、リストラやボーナスカットを想定する方も多いのではないでしょうか。これらの策は病院の現場から反発を招き、実現するのは難しいでしょう。

そこでまず取り組むべきなのが、人件費の変動費化です。人件費は一般的に毎月同額かかる固定費として計算されますが、その一部を変動費として管理する方法です。変動費の割合を多くすることで、売上が減少したときの赤字幅を減らすことができます。

人件費を変動費化することの例として、アルバイトの人員を増やすことが挙げられます。臨床工学技士や診療放射線技師などは比較的アルバイトで働こうとする人が多い職種です。

また、繁閑差が多い部署において、「繁閑に合わせたシフトにする」「忙しいときのみアルバイトを採用する」などの調節をすることで、労働力が余るという状況を回避することができます。

 

3.設備管理費

設備管理費には、清掃費警備費用が含まれます。これらの費用の削減策の1つは、原価積算をした上で価格交渉に臨むことです。

原価積算とは、人件費や材料費、諸経費、管理費など、構成要素であると想定される費用を項目ごとに1つずつ積み上げ、理論価格を推定することです。この推定価格を、現状の支払い価格と比較しながら価格交渉をします。各費用の算出の際には、積算資料などを参考にします。

原価積算について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

また、清掃費や警備費は、それぞれ清掃範囲や警備面積、また頻度によっても変動します。面積や頻度が適切かどうかを検討することで、清掃費や警備費の削減に繋げることができます。たとえば、1日5回のトイレ清掃を4回に変更してもらう、夜間の警備場所を限定的にする、などの策があります。

 

病院におけるコスト削減の具体的な手順

病院経営において、いざコスト削減に取り組もうとした際にどのような手順があるのか、1つ1つ解説していきます。手順は大きく以下の6つに分けられます。

①コスト削減専門のプロジェクトチームを作る

コスト削減に取り組む際、まずコスト削減プロジェクトを担当する専門チームを作ることが重要です。

コスト削減が思うように進まない要因の一つに、責任者が不在であることが挙げられます。責任者がおらず、病院内の各人がそれぞれにコスト削減を意識したところでコスト削減に対する優先度が高くなることは少なく、大きな効果は見込めないでしょう。

また、担当者を置くことによって、責任の所在も明らかになります。責任を負う必要がある分、コスト削減が成功したときに担当者が評価されるので、モチベーションの向上にも繋がります。

 

②現状の支出を分析し、無駄なコストを特定する

どこに削減余地があるのかを特定するために、現状の支出を分析することは必要不可欠です。

支出データを「何を」「どこから」「何のために」調達しているか、といった軸で分析するとよいでしょう。

支出分析のメリットについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

 

③削減目標数値を設定する

削減余地を特定したら、次はどのくらいのコスト削減をするのか、目標を設定します。

ここでは現場担当者にとって無理な目標設定をしないよう、留意します。目標設定の5原則「SMART」に従い、「具体的(Specific)」「測定可能(Measurable)」「達成可能(Achievable)」「合理的(Related)」「時間軸が明確(Time-bound)」な目標を立てましょう。

 

④現場から意見を聞きながら、コスト削減策を検討する

削減目標を設定したのち、コストを支出している当事者を巻き込みながら、実施する削減策をすり合わせます。

その際、「どのようなコスト削減策を実施するのか」「どのくらいの期間で実施することが可能なのか」といった観点で意見をかわすと良いでしょう。

 

⑤コスト削減施策を実行する

実際に決定した削減策を、決められた期間で実施します。

一定の期間ごとに成果をモニタリングし、改善や追加施策の検討が必要であれば、都度検討をしていきます。

 

⑥経営を交えて施策の評価をする

コスト削減プロジェクトのサイクルが終了したら、経営を交えて施策の評価をします。

取り組みによる成果を確認し、その結果に応じて、どこに問題があったかなどを分析します。目標が達成できた場合には、成功要因を分析し、レポーティングしましょう。

分析結果を踏まえて、次のコスト削減プロジェクトに繋げていくと良いでしょう。

 

終わりに

病院経営におけるコスト削減のポイントがお分かり頂けたでしょうか。

コスト削減のプロジェクトチームを作り、医療の質に直結しないところから1つずつコスト削減を実施してみることがポイントです。

本記事が皆さんの病院経営の一助となれば幸いです。