支出管理とは?2020年の最新トレンドとコスト削減に活用するアイデア

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新型コロナウイルスの感染拡大で、日本経済全体の先行きが不透明な中、企業には不要なコストを削減し筋肉質な体制になることが求められています。

その中で今、注目されているのが「支出管理(Business Spend Management)」と呼ばれる概念です。グローバルでは当たり前になっているこの支出管理という概念ですが、日本ではまだまだ普及していません。

今回は、この支出管理(BSM)という概念について詳しく解説します。また、支出管理をコスト削減に活用するにはどうすればいいのか、ノウハウをわかりやすくお伝えします。

TEXT BY Shohei Yamashita

  

支出管理(BSM)とは何か?

支出管理とは、「会計データや購買データを用いて、企業の支出を管理・適正化する一連のプロセス」のことです。

欧米ではBusiness Spend Management(BSM)という言葉で一般的に普及しており、リーディングカンパニーから中小企業まで、幅広く支出管理を行うことが当たり前になっています。

従来、支出管理のプロセスはエクセルや紙、あるいはERPのシステムで管理されていました。現在はクラウドサービスの普及とデジタル化の促進により、支出管理ソリューションはSaaSとして提供されることが主流になってきています。

支出管理というと「コストを削減すること」だけが目的であるとイメージされる方も多いかもしれません。しかし、支出管理を行うメリットはそれだけではありません。

支出管理の最終的な目標は、「組織の収益性を”持続的に”改善すること」にあります。その中には、「コンプライアンスの遵守」「ガバナンスの強化」「供給リスクの管理」など、様々な重要な要素を含んでいます。

 

主に支出管理の対象となるコストは、いわゆる「間接費」や「経費」と呼ばれるコスト。Tail Spend(非計画な購買)と呼ばれる間接コストの支出は、多種多様な費目から構成され、おおよそ150費目程度あると言われています。具体的には、携帯料金・銀行振込手数料・電気代・タクシー費用・SaaSの費用などを挙げることができるでしょう。

間接コストは「塵も積もれば山となる」支出であるため、全体構造の把握が難しく、全ての費目を統合して管理することは、人力ではほぼ不可能と言えるでしょう。例えば会社で使っているボールペンのサプライヤまで、細かく把握している方はそういないのではないでしょうか?

一方で、支出管理の対象になる間接費は、企業の総コストのおよそ「10-15%程度」を占めると言われています。

  

売上原価や人件費と比べ、間接費は削減することによる売上へのマイナス影響が少なく、削減活動に取り組みやすいため、企業の利益創出の金脈として注目されているのです。

例えば営業利益率5%の会社であれば、「1億円の売上を創出すること」と「500万円のコストを削減すること」は利益インパクトでいえば同じです。売上拡大が難しい情勢では、コストを適正化し、成長投資のために利益を確保することが求められているのです。

支出管理ツールを導入し、間接費を適正に管理することによって、利益率の高い筋肉質な経営を目指すことができるでしょう。

  

支出管理の歴史

グローバルおける支出管理方法の進化ー「分散型アプローチ」と「集中型アプローチ」

グローバルでは、利益体質がより求められる外部環境も手伝い、企業に購買/調達部門といった専門部署が早くから立ち上がってきました。そして、支出管理の方法は「分散型アプローチ」と「集中型アプローチ」の間で進化してきた歴史があります。

そもそも、ERPと呼ばれる企業の資源を一元管理するツールが登場する前は、企業内の調達活動は部署単位で分散して行われていました。これを、分散型アプローチ(de-centralized approach)と呼びます。

その後、ERPシステムの登場により、一元的に支出を管理するアプローチが生まれます。これを集中型アプローチ(centralized approach)と呼び、一元的に支出管理を行うことで、企業がサプライヤとの交渉を行う際に集中購買を行うことで規模の経済を活かし、調達価格を下げることを可能にします。

近年では、クラウドを介したSaaS型の支出管理ツールの出現により、分散型アプローチと集中型アプローチ両方のメリットを兼ね備えた調達活動が実現しています。

例えば部署の担当者は、クラウドの支出管理ツールにアクセスすることで、組織全体の支出データを参考にしながら、部署単位での調達活動を完結させることができるようになっています。

これにより、集中購買による価格低減というメリットを享受しながら、部署単位での細かな支出を意思決定できるようになっているのです。

 

デジタルトランスフォーメーション(DX)による変化

また、支出管理の方法はデジタルトランスフォーメーション(DX)によりさらに大きく変化しました。

クラウドコンピューティング技術が登場する前は、主にERPのデータをExcelで管理し、レポートする支出管理方法が主流でした。

クラウドの普及により、2000年代後半からSaaS型の支出管理ツールが台頭してきたため、より支出管理全体のプロセスがデジタル化され、容易に支出分析や適正価格での調達、業務オペレーションの効率化が実現しています。

 

日本国内におけるBSMの現状

日本国内においては、支出管理の方法はまだまだExcelやスプレッドシートによる勘定科目ベースでの管理が主流となっており、SaaS型の支出管理ツールもほとんど普及していません。(ひょっとすると、紙の伝票で管理されている会社もあるかもしれません。)

そのため、勘定科目の荒い粒度でしか支出分析ができず、「何に」「誰が」「どれくらい」払っているかが不透明になってしまっている状況があります。

間接コストの管理が属人的かつ場当たり的になってしまっており、コスト削減や業務改善の余地を多く残してしまっているのが、日本企業の現状と言えるでしょう。

最近は日本においてもSaaS型の支出管理ツールが登場してきており、今後この分野のデジタルトランスフォーメーションが加速度的に進んでいくのではないでしょうか。

  

支出管理(BSM)によって実現する7つの価値

  

支出管理(BSM)ツールによって実現する価値は、大きく7つに分かれます。支出管理によって、「コスト削減」が実現するだけでなく、購買活動全体の業務オペレーションが改善します。

7つの価値を1つずつ詳しく解説しますが、いずれもエクセルベースで取り組むには限界があるものです。自社のコスト削減活動を戦略的に行うためには、支出管理ツールの導入をお勧めします。

 

支出の見える化

支出管理ツールを導入することで、会計データをもとに自動で企業の支出が見える化されます。「誰が」「どこに」「いくら」払っているのかが自動で仕訳され、支出の中でどこに無駄があるのかが可視化されます。家計簿アプリの企業版、と言えばイメージがわきやすいでしょうか。

費目別・部署別・サプライヤ別など、様々な角度から支出を分析することが可能になり、会計データをExcelで仕訳するための膨大な作業工数が不要になります。

 

コスト削減余地の発見

支出の見える化がなされることで、様々な切り口で支出を分析することができます。直近増加している支出は何か、他と比較して大きくなっている支出はどこかが発見できます。

支出管理ツールのデータベースと比較することで、自社の調達価格がベンチマーク(市場価格)水準かどうかの確認ができます。ベンチマーク水準との比較により、どの費目でコスト削減余地があるのかが簡単に分かります。

 

ベンチマーク購買の実現

ベンチマーク水準をもとにした調達活動を行うことで、自社の調達価格を市場価格まで引き下げることが可能になります。

サプライヤに対して闇雲に相見積もりを実施しても調達価格を下げることは難しいですが、ベンチマーク水準を把握することでサプライヤが提示した価格の妥当性を知ることができます。これにより、調達コストの適正化が実現します。

 

取引の適正化

支出管理ツールの中に取引先や契約条件をデータ化することができるので、定期的な見直しが可能になります。

これにより無駄な取引先がないかどうか、契約条件はベンチマーク水準をクリアしているかどうかを常に把握しておくことができ、企業の支出をスリムにした状態を維持することが可能になります。

 

データに基づいた調達実現

「何となく物品が足りないから多めに買っておこう」。このような調達活動をしていませんか?支出管理ツールを導入すれば、このような無駄な支出を減らすことができます。

調達データが常に可視化されているので、分散してしまっている取引先を集約したり、在庫があるのに無駄な購入をしてしまう、といった事態を避けることが可能です。

 

オペレーションの効率化

支出管理ツールを導入することで、購買活動全体のプロセスがデジタル化します。支出分析を行うために膨大なExcelワークで会計データを紐解いたり、目標水準のないまま無駄に相見積もりを複数回取ったり、といった無駄なオペレーションが不要になります。

ベンチマーク水準が把握できているので、「本当にこの調達価格は安いのか?」ということを確認するために、担当者が何回も電話をかける必要もありません。

 

ガバナンスの強化

企業の支出の全てが費用別、部署別、支払先別で可視化されるので、経理担当者は「使途不明の支出」に悩まされることがありません。支出管理ツールの導入は、企業のリスクマネジメント、ガバナンスの強化にも役立ちます。

 

支出管理をコスト削減に繋げるためのフレームワーク

ここまで支出管理ツールの基本について説明してきましたが、この章では実際にコスト削減に繋げるためのノウハウを説明します。

支出管理ツールをただ導入したからといって、企業のコスト削減にすぐ繋がることはありません。ここで紹介するフレームワークを知っておくことで、支出管理ツールをコスト削減活動に有効活用することができます。

 

企業のコスト削減を進める上では、「サプライヤマネジメント」「ユーザーマネジメント」という2種類のアプローチが存在します。

サプライヤマネジメントとは、サプライヤとの交渉によって「いかに調達価格を下げるか」という考え方です。

サプライヤマネジメントでは、見直し優先度の高い(サプライヤ切り替えによりコスト削減余地が大きい)契約の発掘を行い、交渉により有利な契約条件を獲得していきます。

支出管理ツールを導入することで全体のコストの可視化がなされるので、コスト削減余地の大きい費目を特定できます。支出管理ツール内のデータベースでベンチマーク水準が分かるため、相見積もりの目標価格を設定し、価格交渉に望むことができます。

ユーザーマネジメントとは「社内の活動でいかにコストを下げるか」という活動です。

まず最初に行うべきは、部署や個人単位で発生してしまっている分散発注を集約することです。会社として一括でボールペンを調達しているのに、現場の営業パーソンがコンビニでボールペンを買ってしまっている…といった事象は、企業によっては頻繁に発生しているかもしれません。

間接材は、一括調達することでボリュームディスカウントを効かせることが可能です。部署やサプライヤごとに調達が分散してしまっている場合は、サプライヤを集約していくことが必要でしょう。

支出管理ツールにより、取引のあるサプライヤが全て可視化されるので、分散発注してしまっている費目を特定し、集約する動きに繋げることが実現します。

最後に重要なのは、そもそもの調達量を適正化することです。例えば、コピーを「カラーから白黒に変える」「両面刷りにする」など、社内でコスト意識を高めることにより調達量の適正化を図ります。支出管理ツールを導入することにより、部署ごとの支出を細かく可視化できれば、無駄な支出を発見・抑制することが可能になるでしょう。

このように、支出管理をコスト削減に繋げるためには、「コスト削減をそもそもどう進めるべきか?」というフレームワークを知っておくことが重要です。

ぜひこの章で学んだ内容を、自社のコスト削減活動に活用して頂ければ幸いです。

 

おすすめ支出管理ツール3選

最後に、コスト削減に繋げやすいおすすめの支出管理ツールをご紹介します。

コスト削減にお悩みで何か良い方法がないかお困りの方は、まずは下記ツールを調べてみてはいかがでしょうか?

Leaner(リーナー)

オールインワンの支出管理プラットフォームである「Leaner」は株式会社Leaner Technologiesが開発・提供する純国産の支出管理ツールです。

会計データをアップロードするだけで自動で支出の仕訳が行われ、企業の支出のどこに課題があるのかを一元的に可視化できます。

また、ベンチマーク分析を行うことで、自社の調達価格が適正かどうかを判断し、コスト削減余地の算出が可能です。SaaSでサービスを提供しているので、1社ごとに専任のカスタマーサクセス担当がつき、支出の分析から具体的な削減アクションまで一括サポートします。

純国産ツールということもあり、日本の会計慣習にローカライズして使いやすいように工夫されています。

栗田工業や、オイシックス・ラ・大地といった企業がLeanerを導入し、間接コスト改革に取り組んでいます。

 

Coupa(クーパ)

アメリカのCoupa Softwareが提供する支出管理ツール「Coupa」は、クラウド型の支出管理ツールの先駆け的存在です。

2006年創業のこの会社は、2020年10月時点で時価総額2兆円を超えており、BSM分野のグローバルトップベンダーとなっています。Salesforce、P&G、ユニリーバなどグローバルのメガエンタープライズ企業で導入実績があり、日本企業においてもトヨタやNECの海外法人が採用しています。

SAP Ariba

「SAP Ariba」は、ERP分野のトップベンダーであるSAPが提供する支出管理ツールです。

SAP Aribaの支出管理ソリューションを導入することで、調達から支払先までの一連のプロセスを全てデジタル化することが可能になります。日本国内においてはアサヒグループが導入し、間接材の調達コスト改革を実現しています。

 

最後に

いかがでしたか?

この記事で支出管理の基本や、コスト削減に活かすための方法、おすすめの支出管理ツールまで説明をいたしました。

貴社のコスト削減活動に、この記事が少しでもお役立ちできれば幸いです!