実はIT企業は、他の業界の企業と比べて、構造的にコスト削減効果を出しやすいことで知られています。
一般的に、原価や人件費はコスト削減実現の難易度が高く、また売上に対するマイナス影響を与えるリスクが大きい費用です。裏を返せば、比較的削減が用意で、売上への影響を最小限に抑えてコスト削減を実現できる費用が存在します。その代表格が、間接費・経費です。
IT企業のコスト構造を見ると、これらの支出が占める割合が、他の業界と比べ比較的大きいことが分かります。それでは、その中でも具体的にどのような費目に取り組んでいくべきなのでしょうか?
今回は、サイバーエージェントやGMOといったリーディングカンパニーを例に出しながら、IT企業のコスト構造について解説し、どの費目に着手すべきかを紹介します。
TEXT BY Leaner Magazine編集部
IT企業のコスト構造から見るコスト削減の取り組みやすさ
IT企業は、他の業種と比べてコスト削減による成果を出しやすいことが特徴としてあります。
主な理由の1つに、「販売費及び一般管理費」(以下、販管費)の割合が他の業種と比べて大きいことが挙げられます。下の表(売上高に対する販管費の割合)を参照してください。

※IT企業平均:IT企業4社の平均(株式会社サイバーエージェント、楽天株式会社、KDDI株式会社、GMOインターネット株式会社)
IT企業は、他の業界の企業と比べて、販管費の売上高に対する割合が高く、他業界の企業は売上原価の売上高に対する割合が比較的高いことが読み取れます。
売上高に対する販管費の割合が大きいということは、原価以外のコストである間接費や人件費の占める割合が高いということを意味しています。
このうち販管費、またそのうちの多くを占める間接費の占める割合が大きい方が、コスト削減への取り組みがしやすいと言われています。その理由は、以下の2点です。
1つ目は、間接費はその特性から、売り上げに直接的な影響を与えないという点です。原価のコスト削減をする場合、製品の品質を落とす、もしくは数を減らすなどしてコスト削減をすることを考えることになります。これらの行為は、売上の低下に繋がる可能性があります。プロダクトとは切り離された間接費を見直すことで、売上に影響を与えることなくコスト削減を遂行することができます。
2つ目は、販管費は企業によってばらつきはありますが、規模が大きい費用であるためです。販管費の大部分を占める間接費は、製品製造に直接関係しないコストであるものの、多くの企業において売上の10-20%を占め、日本全体での流通総額は200兆円に及ぶと言われています。削減したときのインパクトは大きいと言えるでしょう。
以上から、間接費のコスト削減は取り組みやすく、まず最初に取り組むべきだといえるでしょう。全コストに占める間接費の割合が高い、すなわち販管費の割合が高いIT企業は、コスト削減努力によって得られる果実が、他の業界と比べ大きいといえます。
IT企業が具体的にコスト削減に取り組むべき費目
まずは、代表的なIT企業の販管費の内訳を見ていきましょう。
例1:楽天株式会社(以下楽天)
楽天の販管費の内訳は、広告宣伝費、ポイント費用、人件費、外注費等が多くを占めます。

https://corp.rakuten.co.jp/investors/documents/asr.html(有価証券報告書-第23期 202/213)
例2:KDDI株式会社(以下KDDI)
KDDIの販管費の内訳は、減価償却費、通信設備使用料、人件費、作業委託費が多くを占めています。

https://media3.kddi.com/extlib/files/corporate/ir/library/yuka_shoken/pdf/yuho_2019_Po2M7d.pdf
これら販管費のうち、「Leaner Magazine編集部」がおすすめする、コスト削減余地が大きい費目の打ち手を紹介します。
・外注費
楽天とKDDIの両方に共通してボリュームが大きく、また一般にIT企業で多くかかっている代表的なコストです。
削減の定番の打ち手としては、価格交渉があります。
まず、現在の依頼業務、スキル、単価などの条件を整理し、複数の業者に相見積もりをとりましょう。また、原価積算などを活用し、適正価格を予測したした上で価格交渉に臨むと良いでしょう。
・通信費
通信費には、PC費、サーバー費、回線費などが含まれます。
PC費の削減の打ち手としては、単価交渉や利用形態の見直し、機能の見直しなどがあります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
サーバー費は、使っていないサーバーのダウングレードや停止、また使用中のサーバーの単価適正化のために相見積もりをとることで削減可能です。場合によっては、クラウドコンサルティングを利用するのも良いでしょう。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
回線費は、オプションや必要条件を整理し、既存サプライヤーと単価交渉をするか、または別のサプライヤーに切り替えるといったアプローチで、コスト削減することができるでしょう。詳しくは以下の記事をご覧ください。
・人件費
人件費は、一般的にどの業種でも大きな割合を占める費用です。人件費削減は比較的難易度が高いテーマですが、解雇のような大手術を用いることなく、大きく2つの打ち手によって実行できます。
1つ目はBPR(業務改革)を行い、業務量を調整すること。2つ目は要員計画を見直し、業務の量を平準化することです。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
まとめ
IT業界の企業は、他の業界の企業と比べると、コスト削減余地の大きな「間接費」が占める割合が大きいことがお分かりいただけたかと思います。本記事で取り上げた費目以外にも、見直しができそうなコストを洗い出し、一度取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。
本記事が皆さんのコスト削減の一助となれば幸いです。