間接材調達の価格交渉前に知っておきたいコスト構造の基礎

コスト削減をする際、避けては通れないのが、調達サプライヤとの価格交渉。

間接材の中でも、価格交渉でコスト削減がしやすい費目と、あまりコスト削減効果が見込めない費目があります。

この違いを見極めるためには、対象となる費目の「コスト構造を把握する」ことが重要です。

本記事では、間接材のコスト削減余地を把握するカギとなる費目のコスト構造と、その特徴に応じた効果的なアプローチについて、例を挙げながら紹介します。

TEXT BY Leaner Magazine編集部

コスト構造が価格交渉において重要な理由

 間接材には、プロダクトを製造・提供するためにさまざまな費用がかかっています。コスト構造とは、その内訳・構成を指します。

 ユーザーにとって、サプライヤーがプロダクトを製造するためにどのようなコストがかかっているのかを把握すると、「価格交渉の余地が可視化できる」というメリットがあります。

 交渉の余地がどれくらいあるか分かれば、踏み込んだ価格交渉ができますし、コスト削減に取り組む費目の優先度を決めるのにも役立ちます。

 また、行き過ぎた価格交渉は取引先との関係性の悪化に繋がることすらあります。相見積もりや価格交渉の際に、削減余地の範囲で的確に交渉することで、前向きな交渉が可能になるでしょう。

コスト構造ごとの価格交渉アプローチの違い

 サプライヤーにとって、プロダクトの製造・販売にかかるコストには、大きく「固定費」が占める割合が大きいものと、「変動費」が占める割合が大きいものの2種類があります。それぞれの特性と、特性に沿った交渉のアプローチ方法の代表例をご紹介します。

固定費中心の費目の特性とアプローチ

 例えば「印刷費」などは、固定費が費用の大半を占める費目です。かかるコストのうち固定費の割合が大きいということは、「限界利益率が高い」と言い換えることもできます。どの費目が固定費中心の費目なのかを判断する材料として、限界利益率を確認するのもよいでしょう。

 固定費中心の費目においては、サプライヤー側にとって、「固定費を回収できるかどうか」が、価格設定上重要です。

 逆を言えば、固定費回収後は、価格低減余地が大きくなるのが特徴です。したがって、発注量が増えれば増えるほど、価格交渉がしやすくなります。いかに「発注量を集約するか」が、重要なポイントになります。

 具体的な交渉の進め方としては、サプライヤーの稼働率を上げて、まずは固定費を回収させることを目指すのが一般的です。他社へ分散している発注を統合することで1社の発注量を多くし、単価の引下げの交渉に移ります(ボリュームディスカウントを引き出す)。「スケールメリット」を活かす考え方は、こちらの記事でも紹介しています。

印刷費の例

 「印刷費」を例に、具体的なアプローチを解説します。

 印刷業者のコスト内訳は、「機器代金+カウンター料金」であることが一般的です。カウンター料金には、インク・トナー代などが含まれ、これらは印刷枚数に連動して変動しますが、コストの大部分は、保守・点検費用などの人件費であり、固定費中心の費目と言えます。

 固定費の回収が損益上重要となるため、コピー・印刷費は部門ごとではなく、組織横断的に一つの発注元から調達することで、ボリュームディスカウントを獲得するとよいでしょう。

変動費中心の費目の特性とアプローチ

 例えば「施設関連費」などは、変動費が費用の大半を占める費目です。変動費中心の費目は、発注量の多寡が、サプライヤー側の価格決定にあまり影響を与えないのが特徴です。ボリュームディスカウントはそれほど効果的ではありません。

 コスト削減の代表的なアプローチとしては、価格の構成要素を分解して、各要素の価格を「ベンチマーク比較」したり、「原価推計」する方法があります。むやみに発注量を増やして、ボリュームディスカウントを期待するような価格交渉は、回避したいところです。

施設関連費の例

 施設関連費を例に、具体的なアプローチを解説します。

 清掃や警備、設備管理を担当する業者にとって、これらの業務を行うのに必要なコストは、人件費が主体です。つまりコストの大部分が「人件費単価×施設規模(稼働時間)」となります。特に稼働時間が占める割合が大きいため、これは施設規模によって変動する変動費中心の費目と言えます。

 「自社のオフィスの清掃を全て貴社に委託するから単価を下げてほしい」と交渉しても、サプライヤ側からすれば、担当する施設が増えれば増えるだけ人員が必要になるわけです。派遣する人員一人当たりの給料に手を付けるしかなくなり、合理的な交渉とは言えません。

 このような場合には、原価積算をした上で、理論価格に基づき交渉に臨む、などするとよいでしょう。具体的には、人件費、材料費、諸経費、管理費などの項目ごとに想定される費用を積み上げ、現状の支払価格と比較するアプローチです。各費用の算出の際には、「積算資料」などを参考にします。

 また価格交渉だけでなく、自社内での取り組みを検討することも必要でしょう。清掃が必要な面積を見極め無駄な清掃をなくす、清掃の頻度を減らす、といった方法が考えられます。

最後に

 今回紹介したように、費目のコスト構造によって効果的な価格交渉の方法や、削減アプローチが異なります。このため、コスト構造を見極めることは非常に重要です。

 「固定費中心の費目である印刷費を優先的に削減しよう」「そのためには、発注契約をグループ会社で一元化しよう」というように、コスト構造に合わせた効果的な交渉方法を考えられるとよいでしょう。