コロナ不況は「間接費のコスト削減」で突破する。元戦略コンサルのマネジャーが語る、不景気に耐えられる“筋肉質な経営”とは

今や世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。世界での感染者数は4月16日時点で200万人以上にもなり、ニューヨークをはじめ、様々な都市で外出禁止令が出ています。日本も例外ではありません。全国を対象に緊急事態宣言が発表され、感染者も増えています。

そのような中、多くの企業は日本の経済後退に不安を募らせており、解決策を模索しています。「コロナ・ショック」による影響を懸念している企業は、果たしてどのように立ち回ればよいのか。

本記事では、元戦略コンサルタントのマネジャーであり、現在は「Leaner」のCOOである田中英地に、“不景気を突破するために必要な対策”について聞きました。

TEXT BY Leaner Magazine編集部

早急なコスト削減への対策が、不況を打破する鍵となる

ーコロナの影響で経済への甚大な影響が懸念されています。現在の経済の状況をどう見ていますか?

田中:国内外問わず、リセッション(不景気)に突入することは間違いないと思います。

実際、IMF(国際通貨基金)が公開した「世界経済の見通し」によれば、世界のGDPが2020年で3.0%縮小すると予想されています。

特に米国では、2020年のGDPが5.9%のマイナス成長になると予想されています。これは、リーマンショック直後の2009年のGDP減少率2.5%をも超える水準です。

日本も例外ではなく、2020年のGDPは5.2%のマイナス成長になると予想されており、ホテル業界や航空業界をはじめとして、様々な業界に甚大な影響を及ぼすと想定されます。

  

ーコロナ・ショックをどうにか乗り切りたい企業が多いと思います。予想される景気後退にどのように対処すればいいのでしょうか?

田中:できるだけ早急に、“筋肉質な経営”をする必要があります。

“筋肉質な経営”とは、無駄な部分を削ぎ落とし、本質的な業務のみに労力を集中させる企業経営のことです。京セラ・KDDIの設立者であり、JALを再建したことでも著名な稲盛和夫氏も「筋肉質経営の原則」で以下のようにおっしゃっています。

会社にとって「筋肉」とは、人、モノ、金、設備といった、売上と利益を生み出す会社の資産です。一方、売上や利益を生み出さない余分な資産、例えば売れない在庫や過剰な設備は贅肉です。この無駄な資産を徹底して削ぎ落とし、有効な資産を最大限に活用することで、永遠に発展し続けられる「筋肉質」の企業体質とすることができるのです。

筋肉質経営の原則 稲盛和夫OFFICIAL SITE

 

ー無駄な部分を削ぎ落とす、つまりコスト削減を行うということですね。

田中:そうです。しかし、コスト削減で成果を出すにはある程度の時間が必要です。

まず、様々なコスト削減手法から、適切な打ち手を決める必要があります。手法を決定するためには、取り組む費目の種類、コスト構造の分析、コスト削減目標の設定など多くの準備が必要です。

また、多くのコストは定期的に発生します。人件費、製品の原価、さらにはコピー費等の間接費まで、想像してみるとどれも、少しずつ蓄積されるものだと思います。

これらのことから、コスト削減を始めようと決断してから実際に成果が出るまで、時間がかかるのです。

 

ー時間がかかるコスト削減になぜ、今から取り組むべきなのでしょうか。

田中:すぐに効果が出るような特効薬は、不景気の段階で考え出すのが難しいです。一方で、どの程度不景気が続くのかは不透明なので、何かしらの対策を講じることが必要。

このような状況で今からできる主要な対策が、コスト削減です。

いわばコスト削減とは「止血作業」です。今やらなければ傷口は広がりっぱなしで、場合によっては操業停止など、経営に甚大な悪影響をもたらすことも想定されます。今の段階だからこそ、未然に間接部門のコストを削減し、最悪な事態が起こる可能性を最小限にすることが重要だと考えています。

 

対策①:外部環境の変化に応じた「シミュレーション」をしておく

ー景気後退対策でコスト削減をするとき、何から取り組むべきだと考えていますか?

田中:予想できる外部環境に応じて、どのような対応を取るべきかシミュレーションすることから始めるのがいいと思います。

具体的には、景気により左右される売上高を段階ごとに分け、それに応じたコスト削減策を考えることです。その影響の規模の大小に応じて、コストの削減目標や施策プランを出し、企業のキャッシュの量を査定します。

下記の表は、アメリカのベンチャーキャピタルファンドであるSequoia Capital(セコイアキャピタル)が提唱しているマトリックスを元に、外部の環境変化(売上の減少幅)と、コントロール可能な施策(自社で行うコスト削減幅)を、それぞれ横軸・縦軸に取り、それぞれのケースでどの程度の期間の運転資金を確保できるかを整理したものです。例えば下表の例では、シナリオC(売上がZ%減少(X<Y<Z))の場合、プランC(40%のコスト削減)まで踏み込んで、6ヶ月のキャッシュを確保できることがわかります。

このように整理しておくことで、不確実性の高い外部環境変化に応じて、どのような水準で施策を行うべきか、が明確になります。

 

出所:The Matrix for COVID-19

 

ー予想されるシナリオに応じて解決策をあらかじめ用意することに、どのようなメリットがあるのでしょうか?

田中:状況に応じたコスト削減を混乱なく行うことができます。

不況による影響は不確実性が高く、状況が急変すると企業内でも何をすればいいのかわからない、パニック状態に陥ることが多い。

これらを防ぐために、状況に応じた対応策を出すことで、コスト削減を迅速に進めることができるのです。

 

対策②:コスト削減の中でも「間接費」に着目する

ー外部変化に応じたシミュレーションをしても、どの費目をコスト削減すればいいのかわからない企業も多いと思います。具体的にはどの費目から取り組めば良いのでしょうか。

田中:企業の規模や業種にもよりますが、「間接費」に着目すべきだと思います。

景気後退時にコスト削減の対象となる運用コストは大きく原価・人件費・間接費の3つに分けられます。

まず、原価の削減に取り組む場合、製品の質を下げるか生産量を増やすかの二択になります。この時、どちらも売上に大きく影響する要素であり、コスト削減の成果が出るか不確定です。

人件費の削減については労働条件の変更等の手段がありますが、日本では法律上変更が難しく、人件費を削減することは容易ではないです。

以上の2つの削減が難しい一方、間接費については取り組みがしやすく、かつ一定の余地があると思います。

 

ー間接費はどういった性質の費目なのでしょうか?

田中:間接費は、売上への影響が少ない費目です。また、細かい費用が積み重なっているものの、総額は大きい。業種にもよりますが、売上の10-20%を占めることが多いです。

地味で普段はあまり気にすることのない費目だからこそ、今から見直すべきだと思います。間接費の調達状況や費目の整理などから、始めてみてはいかがでしょうか。

 

戦略コンサル時代から様々な企業のコスト削減に携わっている田中が、不況を突破する方法として挙げている、間接費のコスト削減。

不況の危機感が高まっている今だからこそ、自社の間接費を見直してみてはいかがでしょうか?