コスト削減に失敗する企業がやってしまいがちな3つの“しくじり” #大平裕介のしくじり先生

急な景況悪化・業績悪化を受けて、初めてコスト削減に取り組むという企業も多い昨今。

しかし、突然コスト削減を始めようとしても、成果を出すのはなかなか難しいのが現実。押さえておくべきポイントを外してしまえば、満足いく成果を得ることはできないでしょう。

コスト削減に成功する会社と失敗する会社、その“差”は何か。経費削減を担当していた元コンサルタントであり、現在はLeaner Technologiesで代表を務める大平裕介に話を聞きました。

TEXT BY Leaner Magazine編集部

ー今回は、「大平裕介のしくじり先生」と題し、コスト削減でやってしまいがちな失敗についてお話を聞いていきたいと思います。コンサルタント時代からコスト削減領域に携わってきた経験を元に、“ぶっちゃけて”もらえると幸いです。

完全リモートワークのため、オンラインにてインタビューをさせて頂きました!

大平:腹を割って話します。よろしくお願いします。

 

最初に着手する費目で、コスト削減の行方は70%決まる

ー急な景況悪化をきっかけに、コスト削減を始める会社が増えています。初めてコスト削減をはじめる会社が、特に失敗しやすい“しくじり”について教えてください。

大平:まず、「費目選びのミス」が挙げられます。

コスト削減を行うとき、全費目に着手することは不可能なので、優先順位をつけ、どの費目から削減するかを決める必要があります。そのとき、削減余地が小さかったり、削減の難易度が高い費目から着手してしまうケースが非常に多いんです。

費目選びに失敗した結果、ほとんどの場合、目標としていた削減額に到達できない。削減余地が小さい費目を多少削減できたとしても、“焼け石に水”です。

 

ーなぜ、費目選びに失敗してしまうのでしょうか?

大平:主たる原因は、日常的に「支出の見える化」が行われていないことです。

具体的には、費目の種類を細かく分解して整理し、それぞれの費目にかかっているコストを洗い出します。

これらの「見える化」ができていないと、コスト削減に取り組もうと思った際、「目に付きやすい費目」に着手してしまいがちです。

たとえば、CFOなどのコスト削減担当者がよく使う「タクシー費」や「電気代」などは典型的な例です。使用頻度が高く、取り組みやすそうだから取り組む。しかし、取り組み始めると肝心な削減余地が自社にとって小さいことが判明し、期待していたコスト削減効果が出ない。

 

ー削減余地がある・ない費目を判断する材料の用意が必要ということですね。

大平:おっしゃる通りです。不景気などで利益率が凄まじく落ちている場合、判断材料なく直感で取り組む費目を決めても、目標を達成できないケースがほとんどです。

「この額の削減目標に到達するために、この費目でこのくらいの金額を削減する必要がある」

このように戦略的に目標を決めるためには、費目ごとの支出を把握することが不可欠なのです。

 

ー一般的に「削減余地が大きい費目」にはどのようなものがありますか?

大平:大きく分けると2種類あります。

1つは「コスト削減担当者が思いつかない費目」。過去に取り組んだことがないケースが多く、単純に「濡れ雑巾」になっていることがあります。たとえば、情報システム部門が管轄の回線費、通信費などが入ります。

2つ目は「部署を横断して取り組まなければいけない費目」です。費目を使用しているステークホルダーが多いため、管理が複雑で手間がかかりますが、その分削減のインパクトは大きい。たとえば、複合機などが該当するでしょう。

取り組みやすさに関係なく、コスト削減が不可欠な場面では、これらの費目に着手せざるを得ないでしょう。

 

経営陣は、現場担当者に目線を合わせるべき

ーコスト削減を進める上で、失敗しやすいことの2つ目を教えてください。

大平:2つ目として、「経営陣が現場担当者と同じ目線に立てていないこと」が挙げられます。

経営側が現場担当者にコスト削減を指示する際、その説明が不十分なことによって問題が発生するケースが多く見られます。

たとえば、経営側が「コスト削減をしたいから、コピー費を削減してくれ」とお願いしたとします。これだけでは、現場担当者もどこから始めればいいのか、そもそもなぜコストを削減しなくてはいけないのか、分かりません。

結果的に、経営側と現場担当者の意見が相容れず、こう着状態に陥ってしまう。これでは、コスト削減も前に進まず、社内の雰囲気も悪くなってしまいかねません。

 

ー経営側はどのようなところに気を付けて説明をすればいいのでしょうか?

大平:まずは経営者自身が「コスト削減で生じるメリット、デメリット両方を正確に理解する」ことが重要です。その上で、会社として、また現場担当者の立場においても「メリットがデメリットを上回る」ことを丁寧に説明すべきでしょう。

これによって、現場担当者側もコスト削減に取り組むべき理由がはっきりと分かり、モチベーションにも繋がります。

 

ーメリット、デメリット両方を理解することがコスト削減の第一歩ということですね。

大平:はい。どのコストを下げる際にも必ずメリット・デメリット両方が存在します。

ただ、これが定量的に判断されず、感覚的なものにとどまっている。感覚的なものを言語化し、定量的に比較することで、初めて“交渉”の土台ができます。

現場担当者が何を知りたいのか考えた上で、相手の立場に立った説明をすることが鍵です。

 

「コスト削減=ネガティブ」という固定観念を捨てられるか

ーコスト削減で失敗しやすいことの3つ目を教えてください。

大平:3つ目は、「コスト削減に対するポジティブな雰囲気作りができていない」ことです。

そもそも「コスト削減」という単語自体にネガティブな“匂い”がしますよね。ネガティブな“匂い”があると、どの社員もあまりコスト削減に意欲的に取り組みたがりません。たとえ、優れたコスト削減方法を実行し始めたとしても、社員のモチベーションが上がらなかったため、取り組みが継続されず、コスト削減が失敗してしまうケースもあります。

一方、コスト削減に成功している会社を見ると、コスト削減をポジティブに捉えていることが多い。売上を上げることと同じような感覚で取り組んでいる企業が多いんです。

売上を上げることもコストを下げることも、どちらも「利益を上げるための手段」という意味では、本来同じこと。そういう空気感を作れるかどうかが、非常に重要だと思います。

 

ーコスト削減をポジティブなものに捉え直すために、何をすればいいでしょうか?

大平:「コスト削減の成果を適切に評価する」ことが重要だと思います。

営業が売上を上げて評価されるのと同じ様に、コスト削減の成果を賞賛する。多くの企業では、そんな当たり前のことが行われていません。結果を適切に評価するしくみを整えることで、現場のモチベーションは格段に上がると思います。

 

ーたしかに、評価してもらえないのであれば、モチベーションは湧きづらいかもしれないですね。

おっしゃる通りなんです。私は、現場のやる気を奪うという点で、「コスト削減が正しく評価されない」ということが最も大きな問題だと思っています。

コスト削減へのネガティブな固定観念を取り払うことができれば、会社全体がコスト削減に対して意欲的に取り組むことができる。それができるかどうかの”差”が、成功と失敗の明暗を分けるのではないでしょうか。