コスト削減成功事例7選ー国内の企業に学ぶ経費削減アイデア

IT導入による業務効率化やペーパレス化、人件費削減。——経費削減には、さまざまな方法があります。

その中から自社に合ったコスト削減策を選ぶとき、同業他社の経費削減を参考にする方も多いのではないでしょうか。事例をみることで、取り組むべき費目や削減策など皆さんの会社にも応用できるアイデアが得られるかもしれません。

本記事では、日本企業の具体的なコスト削減成功事例を業界別に7つ紹介します。自社と同じ業界の成功事例から、コスト削減に役立つノウハウを手に入れてみてはいかがでしょうか。

TEXT BY Leaner Magazine編集部

1.メーカー・製造業のコスト削減事例

ダイキン工業株式会社

メーカー・製造業界の企業で占める割合が多いコストに、製造コストがあります。今回は製造コストの削減に成功した、ダイキン工業株式会社(以下、ダイキン)を取り上げます。

ダイキンは、「空調」「化学」「フィルタ」を柱に事業を展開するメーカーです。

従業員数は、2020年3月31日時点で連結会社を含めて、80,369名。連結子会社は国内29社、海外284社にのぼります。

海外での競争力も必要とされるダイキンは、安価なエアコンを販売する韓国・中国メーカーに対抗するために、製造コストの削減に取り組みました。

具体的には、メイン事業の1つである空調の製造において、世界共通で使用可能なエアコン母体構造である「ベースモデル」を開発しました。

販売する市場ごとに構造を造り分ける手間を排除し、製品の一括大量生産を可能にしたことで、製造単価を低減。結果として、全体の製造コストを30%下げることに成功しました。

韓国メーカーを駆逐したダイキン 3つの戦略(日本経済新聞)

    

株式会社ニトリ

株式会社ニトリ(以下、ニトリ)は、家具・インテリア用品を筆頭に、様々な事業を展開している企業です。

従業員数は3,945名。札幌に本社を構え、国内約550店舗、台湾や中国をはじめとした世界各国に約100店舗を展開しています。

ニトリが行った取り組みは、「物流のロボット化」

2016年にロボット倉庫「Auto Store」を国内で初めて導入すると同時に、梱包用段ボールの自動裁断機「BOX ON DEMAND」を導入しました。これにより、商品のピッキングなどの作業効率は導入前と比較して3.75倍向上し、在庫面積も40%削減できたとしています。

これらの物流の効率化に成功し、販管費率をみても、37.2%(2016年)から34.6%(2017%)へと大幅な削減を達成しました。

売上もお値段「異常」。好調ニトリが、桁違いの利益率を上げるワケ

    

2.小売業界のコスト削減事例

株式会社セブン‐イレブン・ジャパン

小売業界は、顧客の些細なニーズに素早く対応するために、迅速な顧客データの管理・活用が求められる業界です。競争が激しい小売業界だからこそ、コストを抑えることも競争力を高めるために必要になります。

そのような小売業界の中で取り上げるのは、株式会社セブン‐イレブン・ジャパン(以下、セブンイレブン)です。

セブンイレブンは、コンビニエンスストア事業を展開し、従業員8,959人(令和2年2月末現在)を抱える企業です。

セブンイレブンが取り組んだコスト削減策は、「伝票・帳票のペーパーレス化」「電力代の削減」

セブンイレブンでは、従来伝票や帳票などがすべて紙であり、その枚数は合計2億2000万枚にも及んでいました。これによって、用紙代はもちろん、紙データの保管コストや事務処理コストがかかっていました。

そこで、会計システムを刷新し、伝票や帳票のデジタル化に取り組みました。これにより、年間約14億円のコスト削減を達成した上に、様々なデータをいつでも確認できる体制を整えたことにより生産性の向上にも繋がっています。

また、どの店舗でもかかる共通のコストの1つ、電力代の削減にも取り組みました。具体的には、店内照明のLEDへの切り替え、空調温度設定を高くするなどの節電対策を、6900店舗で徹底。結果的に、電力の使用料金を1ヶ月で約27%削減することに成功しました。

コンビニ業界の覇者セブン-イレブンを支えるITの真髄(ZDNet Japan)

     

3.金融業界のコスト削減事例

北陸銀行

金融業界は、フィンテック関連企業など、新しいビジネスモデルをもつ企業が台頭しています。一方、従来の銀行は業務の効率化が課題になっている、変革途中の業界です。

今回は、とりわけ競争力が求められている地方銀行のなかで、株式会社北陸銀行(以下、北陸銀行)を取り上げます。

北陸銀行は、富山県富山市を本拠とする銀行で、創業100年以上の歴史ある金融機関です。従業員数は2,511名。国内に188店舗、海外に6店舗(2020年6月末時点)を持っています。

北陸銀行が行ったコスト削減策は「書類のペーパーレス化」です。

ほとんどの銀行のように、紙での処理が一般的であったため、月間2400万枚もの印刷を行なっていました。

全社的なペーパーレス化を図るために、まず行内の資料からペーパーレス化を図ったことが特徴的です。具体的には、ITリテラシーが十分でない社員も使う必要がある、休暇届を電子化することで全社員にITリテラシーをつけてもらうことが挙げられます。

これらのプロセスを1つ1つ着実に行うことで、大幅なペーパーレス化が実現しました。結果的に、印刷枚数を30%削減し、印刷コストを年間1億円削減することに成功しました。

ペーパーレス化で年間1億円ものコスト削減 職員数4300人の北陸銀行は、どうやって迅速なワークスタイル変革を成し遂げたのか(ITmedia ビジネスオンライン)

    

4.運輸業界のコスト削減事例

全日本空輸株式会社

運輸業は、様々な物品・人を多大なコストをかけて運ぶので、サプライチェーンの最適化が求められる業界の1つです。サプライチェーンの中の、調達業務の効率化ももちろん必要不可欠です。

そのような動向の中で、今回取り上げる運輸業界のコスト削減成功事例は、全日本空輸株式会社(以下、ANA)です。

ANAは、航空運送事業から航空機使用事業まで展開する航空会社です。2020年3月末時点で、14,380人の従業員を抱えており、国内外で多くの拠点を持っていることが特徴としてあります。

ANAが取り組んだコスト削減策は、「間接費の削減」です。

航空業界では、事業環境や拠点が変化しやすいため、柔軟な調達活動が行える環境整備が必要でした。具体的には、細かい項目が多い間接材のグループ全体での調達業務の可視化・調整や、ガバナンスの強化などが挙げられていました。

これを実現する基盤として、オラクルの調達管理システム「Orcale Procurement Cloud」を導入。これにより、過去の調達データをベンチマークとして調達活動ができ、取引価格の妥当性を検証するなど、コスト削減成果が期待できます。また、調達データを一元的に管理できるため、全てのワークフローが可視化、問題のある活動が行われていないかがチェックされ、ガバナンスの強化にも役立ちます。

ANAはこれにより、間接材の調達コストを5%削減できると見込んでいます。

日本オラクル、ANAがオラクルのSaaS型の調達管理システム「Oracle Procurement Cloud」を導入(日本経済新聞)

    

5.マスコミ業界のコスト削減事例

株式会社電通

マスコミ業界は、外部企業と連携して進める仕事が多い業界です。そのため、出張費や接待費が他の業界と比べて多いのが特徴です。

これらの嵩みやすいコストの削減に取り組んでいる企業の1つが、株式会社電通(以下、電通)です。電通は、 総合広告代理事業、並びに 「Integrated Communication Design」を事業領域としたコミュニケーション関連の統合的ソリューションの提供や経営・事業コンサルティングを手がける企業です。

電通が削減に取り組んでいる、主なコストは「人件費」

まず、不要な出張や裁量的支出の削減に取り組みました。具体的には、経費の給付条件を明確にすることで、給与以外にかかっている無駄なコストを削減しました。

他にも外部企業との契約状況の見直しなどの様々なコスト削減策を行うことにより、コロナショックにも関わらず、2020年1~6月期の連結決算(国際会計基準)は、最終損益が157億円の黒字となりました。

電通グループの1~6月、黒字転換 コスト削減で(日本経済新聞)

     

6.ソフトウェア・通信業界のコスト削減事例

ソフトバンクグループ株式会社

ソフトウェア・通信業界は、細々とした調達物が多く、それぞれの費用がどこからきているのか把握しずらいという特徴があります。例えば、ITコスト。ITコストの中がどのような費用になっているのか把握せずに扱っていることもあるのではないでしょうか?

今回は、本業界の企業の1つであるソフトバンクグループ株式会社(以下、ソフトバンク)のコスト削減をみていきます。ソフトバンクは、子会社を2020年3月末時点で1475社抱える大企業です。

ソフトバンクは細かいコスト削減策を1000個以上積み重ねることにより、200億円規模のコスト削減を実現させました。

中でも大きなインパクトがあった削減策に、「抜本的なペーパーレス化」が挙げられます。社内業務用の紙を全て電子化することを徹底しました。また、法人顧客との契約も電子化することにより、印紙税を削減。これらの結果、ペーパーレス化だけで数億円のコスト削減を実現しました。

また、その他の施策についても週次で削減状況をモニタリングするなど、PDCAサイクルを徹底。それぞれの施策の有効性を確認していました。

ソフトバンク、コスト200億円削減(日本経済新聞)

     

7.官公庁・公社のコスト削減事例

経済産業省

官公庁・公社は、ルールを守りながらあらゆる民間のニーズに対応するため、急速な変革がしづらい業界の1つです。特に、事務手続き業務に時間がかかってしまうことが多い特徴があります。

そのような中で、コスト削減に取り組んでいるのが、経済産業省です。

経済産業省が取り組んだのは「行政手続きコストの削減」「省内の事務作業の効率化」

まず行政手続きコストは、従来の紙での手続きでは、何度も同じ情報を書き込む手間が発生していました。これをオンラインでの入力にし情報を管理できるようになったことで、異なる手続きであっても入力項目を減らすことが可能になりました。

また省内に存在していた事務作業の効率化にも取り組みました。具体的には、人事情報の登録作業をRPA(Robotic Process Automation)で一部自動化し、作業時間を1/3にまで減らすことに成功しています。

行政手続コストの削減に向けた基本計画の改定について(経済産業省)

    

企業のコスト削減は間接費から着手しよう

日本企業でコスト削減に成功している事例を7つの業界からご紹介しました。

先進的な取り組みを行う企業は、ペーパーレス化や人件費削減をはじめとして、様々なコスト削減策で利益を確保しています。

また、間接費の削減に取り組んでいる企業が多いことも特徴です。コピー費、電力代をはじめとする間接費は、1つ1つでみると細かいですが、費目数が多く、合計すると全体ではかなりの金額に及びます。また、原価などの直接費と比べて、売上に与える悪影響が小さいことも特徴です。

様々な事例を参考にしながら、皆様の企業のコスト削減にも、アイデアを有効活用してみてはいかがでしょうか。