真似したくなる!日本企業のコスト削減成功事例5選

IT導入による業務効率化やペーパレス化、人件費削減。——コスト削減には、さまざまな方法があります。

国内で最も有名なコスト削減事例の一つとして、稲盛和夫氏のJAL経営改善が挙げられます。その独特な管理会計手法である「アメーバ経営」は、多くの方がご存じかと思います。

成功したコスト削減事例からは学ぶものが多く、みなさんの会社にも応用できる方法が見つかるかもしれません。

本記事では、実際にコスト削減に成功した国内企業の事例を5つご紹介します。

TEXT BY Leaner Magazine編集部

 

事例1. ダイキン工業株式会社

ダイキン工業株式会社(以下、ダイキン)は、「空調」「化学」「フィルタ」を柱に事業を展開するメーカーです。

従業員数は、2019年3月31日現在で連結会社を含めて76,484名。連結子会社は国内30社、海外261社にのぼります。

ダイキンが最も成功したコスト削減は「製造コストの削減」

メイン事業の1つである空調の製造において、世界共通で使用可能なエアコン母体構造である「ベースモデル」を開発。販売する市場ごとに構造を造り分ける必要をなくし、製品を一括大量生産することにより、質を保ちながら製造コストを30%下げることに成功しました。

 

ここでダイキンが家庭用エアコンで打ち出した戦術の1番目が、モジュラーデザイン「ベースモデル開発」である。日本と欧州、アジアから市場情報を集約。顧客ニーズの「最大公約数」ともいえる世界共通のエアコン母体構造「ベースモデル」を開発設計した。クルマでいえば、複数の車種間をまたいで共用できるプラットフォームをつくったのだ。

ベースモデルは世界共通のため、販売する市場ごとに造り分ける必要がない。すなわち、同一のものを大量生産できる。これにより、ダイキンは量産効果を存分に引き出し、製造面でのコスト削減を最大化した。加えて、開発工数や部品調達、生産準備の負荷を最小化し、トータルのコスト競争力を大幅に引き上げることに成功した。

威力は絶大だった。韓国メーカーがボリュームゾーンに攻勢を掛けたのは、インバーターを搭載していない安価な家庭用エアコン(ノンインバーター機)。これとインバーターを搭載したダイキンの従来の家庭用エアコン(インバーター機)をコストで比較すると、ノンインバーター機のそれは30%も低かった。ここにダイキンはベースモデルを投入し、インバーター機のコストをノンインバーター機と同水準にまで引き下げた。省エネ性能が付いた製品を、そうではない製品と同等のコストで造れるコスト競争力を身に付けたのだ。

韓国メーカーを駆逐したダイキン 3つの戦略(日本経済新聞)

 

事例2. ANAホールディングス株式会社

ANAホールディングス株式会社(以下、ANA)は、航空運送事業を柱に事業を展開しています。

従業員は連結会社を含めて43,466名。全日本空輸株式会社(ANA)を持株会社とし、子会社117社、関連会社47社で構成されています。

ANAが実施したコスト削減の中で最も有名なのが「サプライチェーンの改善」

需要の低迷に適合した供給体制に調整することで、燃油費・空港使用料を削減、人件費・外部委託費の圧縮に成功。また、国際線代理店への販売手数料の支払いを停止するといったコスト削減策を実施しました。

営業損失は出ているものの、以上の取り組みで1000億円以上のコスト削減に成功しています。

 

営業費用に関しては、期初に策定した前期比730億円規模 のコスト削減策「緊急対策プラン」に加え、2009年7月に「緊急 収支改善策」として300億円規模の追加の収支改善策を策定 し、それぞれの対策を予定通り遂行しました。その結果、営業 費用は、前期から1,023億円の削減を達成し、前期比7.4%減の 1兆2,826億円となりました。

ANA財務分析

 

事例3. 株式会社北陸銀行

株式会社北陸銀行(以下、北陸銀行)は、富山県富山市を本拠とする地方銀行で、創業100年以上の歴史ある金融機関です。

従業員数は2,621名。国内に187店舗、海外に6店舗を持っています。

北陸銀行が行ったコスト削減は「ペーパーレス化」

ITツールの導入によるペーパーレス化の実現で、印刷枚数を30%削減し、印刷コストを年間1億円削減することに成功しました。

単純に仕組みを導入しただけでなく、印刷枚数をKPI(Key Performance Indicator)に、印刷コストをKGI(Key Goal Indicator)に設定するなど、明確な目標を定めた上で改善を重ね、コスト削減を効果的に進めた模範的な事例と言えるでしょう。

 

大きく成果を上げたものの1つがペーパーレス化だ。紙での処理が中心だった行内での事務を、ネオジャパンのグループウェア「desknet’s NEO」を導入し、ペーパーレス化した。

 効果は劇的だ。当初月間2400万枚もあった印刷枚数が約1年で30%削減。印刷コストだけで年間1億円のコスト削減を実現した。

 単に仕組みを導入しただけではこれだけの効果は出ない。そこには、取り組みを改善し続けるPDCAの推進があった。ペーパーレス化のKPIには印刷枚数を置き、KGIには印刷コストを置いて、それぞれの進捗をチェックしていったという。

 とはいえ、導入当初はITリテラシーが十分でない行員もおり、一筋縄ではいかなかった。3カ月の移行期間中、工夫したのはいかに現場の全員に使ってもらい、慣れてもらうかだ。稟議書や通達だけでなく、休暇届を意図的にペーパーレス化した。休暇届は誰もが使う。休みたければ試さざるを得ない。

ペーパーレス化で年間1億円ものコスト削減 職員数4300人の北陸銀行は、どうやって迅速なワークスタイル変革を成し遂げたのか

 

事例4. 株式会社セブンイレブン・ジャパン 

株式会社セブン‐イレブン・ジャパン(以下、セブンイレブン)は、従業員9,092名を抱える企業です。

北陸銀行と同様に、セブンイレブンが行ったのはは、ITツールの導入による「ペーパーレス化」

会計システムを刷新し、伝票や帳票を電子化したことで、年間約14億円のコスト削減を達成しています。
 

2005年には会計システムも再構築し、およそ2億2000万枚に上っていた伝票と帳票を電子化した。紙からデジタルデータによる保存に変わることで、ウェブを活用して検索、参照可能になったほか、会計数値システムによる自動チェック体制を整えて正確性を確保し、生産性の向上にもつながった。

 こうした取り組みにより、用紙代、紙データの保管コスト、事務処理コストは大きく削減され、本部、店舗、取引先の合計で、年間2億枚以上のペーパーレス化を実現。年間で約14億円のコスト削減を達成したという。

コンビニ業界の覇者セブン-イレブンを支えるITの真髄–災害対策とコスト削減を両立 – (page 2)

 

事例5. 株式会社ニトリ

株式会社ニトリ(以下、ニトリ)は、家具・インテリア用品をはじめとしたさまざまな事業を展開する企業です。

従業員数は3,949名。札幌に本社を構え、国内約550店舗、台湾や中国をはじめとした世界各国に約100店舗を展開しています。

ニトリが行った取り組みは、「物流のロボット化」

2016年にロボット倉庫「Auto Store」を国内で初めて導入すると同時に、梱包用段ボールの自動裁断機「BOX ON DEMAND」を導入。これにより、作業効率は飛躍的に向上。また在庫面積を削減することで物流の効率化を図ることに成功し、販管費を大幅に削減しました。

 

こうした物流の効率化は数値として如実に表れています。2017年2月期第1四半期(3~5月)の販管費率は34.6%です。16年2月期(通期)の37.2%と比べて、大幅なコスト削減を実現したことがわかります。直近5年の通期の販管費率は35.8~38.1%の間で推移しているので、「Auto Store」や「BOX ON DEMAND」により販管費を抑えることができたといえます。

他社では見ることができない高度な物流体制を自前で構築したことが、ニトリの好調な業績を支えているといえそうです。

売上もお値段「異常」。好調ニトリが、桁違いの利益率を上げるワケ

 

おわりに

以上が、日本企業でコスト削減に成功した5つの事例になります。

特に北陸銀行やセブンイレブン、ニトリの事例のように、ITツールの導入によるコスト削減は、多くの企業にとって取り組みやすい手法の1つと言えるでしょう。

もちろん、ツールを導入すれば必ずコスト削減が実現できるというわけではありません。成否を左右するのは、適切な目標設定や、地道に改善プロセスを実行するといった「運用」だと言えるかもしれません。