2020.02.04
なぜ日本は“コスト削減後進国”と言われるのか。戦略総務を配置し、間接部門から経営改革をすることの持つ意味

「日本はコスト管理に対する意識が低い」「日本の総務は遅れている」——そんな声を少なからず耳にする機会があります。実のところ、欧米諸国と比較すると、日本企業のコスト意識は相対的に低いようです。
企業が利益創出をする基本施策は「売上の増加」と「コストの削減」。売上を増加させることばかりに注目が集まりますが、営業利益率5%の企業において「1億円のコスト削減」を実施することは、「20億円の売上を立てる」ことと、ほとんど同じ利益効果があります。
しかし日本では、コスト削減に消極的な企業が多く見られます。一方、欧米企業では、支出の分析・間接費のコスト削減が積極的に行われており、支出管理は重要な経営戦略の1つとみなされている。
このような違いは、どういったところにあらわれるのでしょうか?
本記事では、日本企業と欧米企業の間に存在する「コスト管理能力の差」について考察します。
TEXT BY Leaner Magazine編集部
日本企業がコスト管理において「遅れている」3つのポイント
日本企業が欧米企業と比べ、コスト管理が進んでいないことは、主に3つのポイントから見てとることができます。
「総務の仕事の価値が理解されていない」
まずは、「総務の仕事の価値が理解されていない」ことです。
総務や経理など「間接部門」は、営業など「直接部門」と比較してその価値を軽視されがちです。その実、インターネットで「間接部門」と検索すると、関連するキーワードに「多すぎ」「いらない」「偉そう」など、消極的な言葉が散見されます。
なぜ、そうした事態になってしまうのでしょうか。その原因の一つに、間接部門の業務、特に「総務の業務」が、どのようなものかを知らない人が多いということが挙げられます。
他部門の業務内容を詳しく知らないのは仕方がないかもしれませんが、総務は業務特性上、1つの業務だけに従事しているわけではないので、なおさら分かりにくいのが実情です。
その結果、総務の代表的な仕事の一つである「経費削減」も、どのような目的で行われているのかが理解されにくい。ゆえに摩擦が生じやすく、なんとなく売上をつくる直接部門の仕事がより上位にあるものだと感じる人が少なくないのです。
コスト削減の「プロ」が存在しない
次に、「コスト削減のプロが存在しない」ことです。
欧米では、コスト削減が業務戦略の重要な位置付けにあるため、CPO(Chief Procurement Officer)が設置されるなど、利益創出に向けた購買業務が当たり前に行われています。
しかし日本では、間接費専門の部署を設置することは稀です。購買業務は総務・経理などと兼任、あるいは1〜2名といった少人数のことが多く、結果として発注・処理などの通常業務で手一杯になっているケースが少なくありません。
経費削減に対するインセンティブの欠如
最後に、「経費削減に対するインセンティブの欠如」です。
間接費の改善は、間違った方法で進めてしまうと、かえって業務非効率化を招いてしまう可能性があります。そのため、間接費の改善を「自分の評価を下げるリスクを伴う行為」と捉えてしまい、取り組みが進まないという事例が発生しています。
これはひとえに、「総務を評価する文化がない」ことが原因と言えます。
多くの日本法人では、コスト削減の効果を定期的に振り返る習慣がありません。そのため、総務・経理担当者がコスト削減に成功し、利益創出しても、「担当者の取り組みによって下がったのかどうか」「取り組み前と比較して何のコストがどのくらい下がったのか」が分かりづらいために適切に評価されないケースが少なくないのです。
総務部は企業の「なんでも屋」として、細々とした仕事に日々追われており、コスト削減への取り組みとして相見積もりを取るだけでも相当な業務負荷がかかります。
また、上記で挙げた「直接部門との摩擦」、「コスト削減のプロがいない環境」と「失敗に対する防衛意識」もあり、コスト削減に本腰を入れて取り組むために業務を一から再構築することが難しいという事実もあります。
ただでさえ時間がなく後回しにしてしまうのに、出した結果を評価されない環境では、コスト削減に対して消極的になってしまうのも納得できます。
これからは総務が社内のエースになる時代
以上、日本企業がコスト削減を進められない理由について説明しましたが、みなさんの会社の状況に当てはまるものがあったのではないでしょうか。
これからの日本企業は、労働人口の減少やグローバル化、働き方改革の影響など、複合的な要因から働き方が多様化していきます。少ない時間で利益を最大化する動きが進むため、間接部門からも利益創出に貢献することが求めらます。
そうした際に、注目が集まるのが総務の仕事です。経営を支える“戦略総務”の存在は、企業の成長に欠かせないピースになっていくでしょう。
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